ちょっと変だよ、政府のキャッシュレス対策 消費税10%対策に、広がるカード会社の困惑
世耕弘成経済産業大臣は10月19日の会見で「クレジットカードの導入が進んでこなかった背景には手数料負担が重いということもあった。中小の商店で対応ができる環境を整える議論の中で、手数料引き下げの措置も検討し、その際には関係事業者にも協力をお願いしなければならない」と語った。
カード会社が加盟店から受け取る手数料は2~4%程度のケースが多いが、飲食店などが多い中小企業の場合、さらに高くなることもある。「協力」として、政府は3%台を軸に調整を進めるもようだ。
これに対して、あるカード会社幹部は「加盟店手数料は過去からずっと低下してきた。今でも競争原理が十分に働いている」と顔をしかめる。カード会社の業績をみると、商品やサービスの購入額にあたる取扱高こそ右肩上がりが続いてきたものの、手数料収入にあたる売上高の伸びは追いついていない。「公共料金が取り扱えるようになって、カードの取扱高は増えたが、実入りは伴っていない」と前述の幹部は打ち明ける。
カードをめぐる日本の事情
手数料競争が厳しいとカード会社が訴える背景には、日本独特の事情もある。1つの加盟店が複数の加盟店管理会社と契約している「マルチアクワイアリング」方式と呼ばれるものだ。
ビザやマスターカードといった国際ブランドのロゴがあるカードは、海外では店舗の加盟店契約会社いかんにかかわらず広く使える。ところが日本では、各カード会社が自社の特定カードのみを受け入れる方式で加盟店開拓を進めたため、店舗側としては複数の会社と契約する必要があった。その後、状況は海外と同じように改められたが、その名残で加盟店が複数契約を抱える形が多く残った。
加盟店にとってみれば、各管理会社を競わせて、手数料引き下げ交渉を優位に進める武器になっているという。「契約ごとにみれば、加盟店手数料は3%近辺が最も多いかもしれないが、加重平均すれば2%程度ではないか」という業界関係者もいる。
とはいえ、公共料金や大手小売りと比較すれば、中小企業ではカード会社との価格交渉力は強くない。だが中小企業の手数料率が高くなる理由はそれだけではない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら