「劣化したオッサン」たちが再生産される本質 中堅・若手が三流のおじさんに対抗する武器

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この「モビリティ」というのは、今後、柔軟で強かなキャリアを歩んでいくための最重要キーワードだと思います。モビリティを高めるためにこそ、汎用性の高い知識とスキル、あるいは社外の人脈や信用を自分の資産として積み上げる必要があるのです。

一般に、スキルや知識の獲得は、所属する組織のなかでのパフォーマンスを上げるために行われるという印象がありますが、これはフレームをどう取るかの問題です。

もちろん、そのような意図でスキルや知識を獲得することもあるでしょうが、今後はむしろ、どのような場所でも生きていけるためにスキル・知識を獲得する、今いる場所を「いつでも出ていける」ような状態にするために学び続ける、という意識が重要ではないかと思います。

年長者を甘やかさないために

先ほど、オピニオンとエグジットを活用せず、ただダラダラと与えられた仕事に無批判に取り組むことで「劣化したオッサン」は生まれる、という指摘をしました。

ここではさらに、オピニオンとエグジットの欠如が、そのような「劣化したオッサン」を甘やかし、増長させる要因になっている、という指摘をします。

なぜ、このような「甘やかし」が問題になるかというと、これは最終的には「フィードバックの欠如」という、システムにとって致命的な問題をもたらすことになるからです。 システムを健全に機能・発展させるには適時・適切なフィードバックが不可欠です。

スリーマイル島原発事故では、複合的・連鎖的に進展する事故の状況に対して、情報を処理するコンピュータの処理能力が間に合わず、適時・適切なフィードバックが不可能になったことで、最終的にメルトダウンという事態にまで発展してしまいました。

日大アメフト部監督や日本ボクシング協会の会長についても、長年にわたってフィードバックが機能しなかったために熱暴走が止まらず、結果として「人生のメルトダウン」を招いたと考えれば、フィードバックがシステムを健全に機能させるために、いかに重要かということがおわかりいただけると思います。

そして、オピニオンやエグジットというのは、最もわかりやすく、有効なフィードバックなのです。

しかし、日本ではこのフィードバックがあまり用いられていない。上司に強く反論したり、意見したりすれば「空気を読めないヤツ」というレッテルを貼られてしまい、転職についても、昨今では増加傾向にはあるものの、まだまだ一般的にはリスクが大きいと考えられています。

劣化したオッサンからすれば「オレのやっていること、言っていることに誰も反論しない、オレの支配下から誰も退出しない」ということになれば、自分がリーダーとしてそれなりの人望を持っているのだ、と勘違いしてもおかしくはありません。

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