上下関係があるとはいえ、こう言われて、ムッとする若手社員は少なくないだろう。特に気持ち重視型の人は、感情を大事にするので、「なんでこんな人に従わないといけないのか」と思いがちだ。
しかし、意外なことに、こうして命令口調を使う上司は、その部下のことを大事に思っていることが多いという。伊庭氏は「『見込みがあるから、サポートしてやろう』『他のやつにはいちいち言わないぞ』と思っていたりするのです。つまり、味方である可能性が高い。だから、口調だけで、この上司を嫌いになるのはもったいないことです」と分析する。
また、勝負重視型の上司は、ストレートな言い方で、ダメ出しをしてくる傾向もある。これを聞いて、気持ち重視型の部下は、「嫌われているのか?」と思いがちだが、上司は特に部下に怒りなどの感情はなく、冷静に注意していることがほとんどだという。「要は、勝負重視型の上司は、仕事をきっちりしたいだけ。仕事に感情を持ち込まないのです。だから、裏を返せば、このタイプの上司には、必要以上に好かれようとすることはない。きちんと仕事をすれば、認めてくれます」(伊庭氏)。
武勇伝には「3つのあいづち」が有効
一方、注目重視型の上司に部下が振り回されるケースは多い。
このタイプの上司の特徴は、仕事の相談をすると、いろんなアドバイスをしてくれるが、実は、単なる思いつきや実現不可能なものも少なくない。しかし、「上司のアドバイスだから」と理論重視型や気持ち重視型の部下が真摯に受け止め、混乱してしまうことが多いのだ。だから、注目重視型の上司の下についたら、「スルーすること」を覚えたほうがいいという。
上司自身も言ったことを忘れていたりするので、すべてのアドバイスを生真面目に受け止める必要はない。もし「あのアドバイス、実践したか?」などと聞かれたら、「実は、どうしていいか、悩んでおりまして……」と相談モードに持ち込むといいだろう。
もう1つ、注目重視型の上司に多いのが、「武勇伝を語ること」。最初は耐えられても、だんだんうんざりしてくるかもしれない。ただ、上司との関係を良好に保ちたいなら、ぐっとこらえて、気持ちよく話してもらうようにしたい。そこで、伊庭氏がすすめるのは、「3つのあいづち」。具体的には、「相手の言葉を反復する」「感情に同意する」「間をあける」の3つだ。
たとえば、「俺が若いときは、毎朝7時に営業先に行き、役員を待ち伏せして、仕事をとった」という武勇伝があったとしたら、「へえ! 7時ですか」と相手の言葉を反復。「朝早いから、しんどいんだよ」などと感情が出てきたら、「朝はしんどいですよね」と感情に同意する。
さらに「俺はナンバーワンになりたかったから、とにかくやる気で燃えていたんだ!」と何かを強調していたら、「すごいですね……」と言って、しばらく間を空けるといった具合だ。
「理論型の部下は、『いつの話ですか』『具体的にどうしたんですか?』などと根掘り葉掘り質問しがちですが、注目重視型の上司は、話を盛っていることも多いので、答えに窮して、気分を害することがあります。あいづちだけに止めておくのがいいでしょう」(伊庭氏)。
このように、上司の思惑がわかると、苦手意識も薄らぐはず。何か嫌なことがあったら、この話をぜひ思い出してみてほしい。
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