(第19回)今、本当に求められている説明会を考察する

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 もっとも、自社の採用活動と比較してみる場合には、「自社の知名度」を合わせて考えてみる必要があるだろう。例えば、プレゼンテーションや説明会の内容に不満を感じたとしても、人気企業であれば、選考に進む学生は多くなる。一方で、知名度の低い企業であれば、説明会の中身が選考・内定辞退率に直接影響してくることだろう。
 そういったいくつか加味しなければならない要素はあるが、いずれにせよ「説明会」は、学生が就職先を決める際に大きな影響を与える場であるようだ。

Q:あなたが参加した中で、最も志望度が上がった説明会の実施企業名を教えてください。(上位77社(全体255社))
<画像クリックで拡大>
 さて、上の表は「最も志望度が上がった説明会」として挙げられた企業をランキング形式で表したものだ。これによると、1位がプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン、2位が三井物産、3位がリンクアンドモチベーションとなっている。
 学生から寄せられた生のコメント(※)まで詳細に読み込むと、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンは、説明会の中で行うグループワークを通じ企業理解が深まったという声が約半数。プレゼンテーターの話し方とその内容が素晴らしかったという声が半数を占める。
 三井物産とリンクアンドモチベーションも同様で、グループワークが素晴らしかったという意見とプレゼンテーターの力量に評価が集まっている。リンクアンドモチベーションに関しては、複数の社員にまとめてOB訪問できるという内容も評価の声に含まれている。

評価される説明会の3大要素は、
1)グループワークの導入による体感型説明会
2)プレゼンテーションの巧みさ
3)社員との交流
と結論づけることができそうだ。

 さて、もうひとつ興味深いデータがある。「上がった」とは逆の「志望度が下がった説明会」のランキングをとっているのだが、説明会の志望度が上がった企業に名を連ねている会社の約2割が「志望度が下がった企業」にも名を連ねているのだ。
 代表的な例で言うと、リンクアンドモチベーションが挙げられる。志望度が上がった説明会で3位にランクインしているにもかかわらず、志望度が下がった説明会のランキングでは1位をとっているのだ。ちなみに、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン、三井物産に関しては、志望度が下がった企業に社名はあがってこない。
 「志望度が上がった」「下がった」両方にランクインしている企業に共通している傾向として、「演出が過剰」という声が多く寄せられている。最近の学生は企業説明会に、エンターテインメント性ではなく、「仕事や社員の本当の姿を見る」ことを求めているのだろう。
 演出が効果的に機能した相手に関しては心をがっちり掴むことに成功しているが、演出ではなく、真実の姿を見たいという学生にはマイナスに働いたということが言えそうだ。

 以上の分析は、いたずらに説明会に数を呼び込むのではなく、「ターゲットを絞って説明会に集客する」ことの重要性をあらためて気づかせてくれる。

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