(第18回)「質問」のススメ~ともに学び、高めあうために~

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(第18回)「質問」のススメ~ともに学び、高めあうために~

福井信英

 ジョブウェブ社内での私の仕事のひとつに、「ビジネス理解講座での司会・進行」というものがある。ビジネス理解講座とは、学生向けのセミナーのひとつで、経営戦略、マーケティング、セールス、ファイナンスの4つのビジネススキルに関してケーススタディーを通じて学ぶ、というものだ。

 明治維新への関心が特に強いというわけではないが、松下村塾を作った吉田松陰の、ひとところに集まったメンバー一人ひとりが教えられることを教え、ともに学び、高め合う、という考え方が好きで、できればそういう場にしたいと思って運営している。
 吉田松陰の思想は、大学や研究室、MBAプログラムなど、あらゆる高等教育機関で共通する考え方だと思う。高校までは、教える存在としての教師がいて、教えられる存在の生徒がいる。しかし、それ以降は、ともに学び、高め合う」という考え方が不可欠だ。なぜなら、師を超える弟子が容易に誕生しうるからだ。師は弟子から刺激を受け、自らを高めると共に、弟子が師を超えることができるように可能な限りのサポートをすることが役割になるだろう。
 もちろん、弟子に対してのサポートの方法はいろいろあっていい。自らの研究を追求することによって、弟子に背中で語るという方法もあれば、積極的に弟子の研究や学びに介入するという方法もありだろう。いざ、師である自分自身を超えたと感じた場合は、より活躍できる環境に弟子を紹介するというのが最後の役割になるだろうか。それは既に師と弟子という関係ではなく、“ともに高みを目指す仲間”という理想の関係に到達したという証でもある。

 さて、本題。

 就職活動を通じて社会人と触れあう機会は非常に多い。どうしても社会人が「話し手」、学生が「聞き手」となることが多いと思うが、学生の皆さんから「効果的な質問」をいただくことによって、相互に学び、高め合う関係を築けると感じている。

 私が定期的に行っている「ビジネス理解講座」では、参加者の皆さんに最後にひとつだけメッセージを伝えるようにしているのだが、先日は、

 「専門用語に踊らされず、わからないこと、疑問に感じることがあれば、自分の頭で理解できるまで聞き、調べ、自分の言葉で語れるようになって欲しい」。

という内容を話した。

 学生の皆さんであれば、就職活動でOB・OG訪問をすることもあるだろう。会話の中に様々な専門用語が出てきてとまどうことも多いだろう。そんなとき、何となく頷いて、話を聞き続けるのではなく、分からないことがあれば、積極的に質問してみるといい。そのほうが、自分にとっても、話し手である相手にとってもプラスになることが多い。
 大人だって、なんとなく「専門用語」を使っているケースは多い。試しに、「マーケティングって何ですか?」「コミュニケーション能力って何ですか?」「戦略って何ですか?」という質問をするとしたら、10人いれば10通りの答えが返ってくるだろう。
 一般的な定義を語ることができ、その上で、自分としてはこう考える。とか、わかりやすいたとえ話や活用事例をもって話すことができる人がいれば、その人は本当に「学んだことを自分のもの」にしているのだろう。

 私自身もそうなのだが、学生の皆さんからの素朴な質問によって、深く理解せず単に専門用語を振り回して話しているだけだった自分に気付かされることも多い。恥ずかしくなって、家に帰ってから必死に調べることも多々ある。
  先日も、運営していた講座の中で、「日経平均が下がるとなぜ問題なのですか」「今行っている景気対策ってどの程度、効果があるんですか」といった、大変素朴だが、本質的な質問が数多く寄せられ、刺激的な一日を送ることができた。私自身、もう一度学び直さなければいけない部分もあり、大変勉強になった。
 わからない言葉や用語があれば、「まず、率直に聞いてみること」をオススメしたい。それが、お互いを高めあう一歩となる。
福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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