テキストデータ(文字のみの情報)を金融市場や経済の分析に利用する動きが広がっている。
日本銀行は9月3日に「機械学習による景気分析 ―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」というワーキングペーパーを発表した。そこで、「景気分析におけるテキスト分析の位置づけは、公的統計等を利用した従来の分析手法にはない新しい角度から有力な材料を提供することで、景気認識を容易にし、景気判断の精度を向上させるための補完的な役割を果たし得る」としている。
筆者も6月に政府の「骨太の方針」(「経済財政運営と改革の基本方針2018」)からテキストマイニングによって重要なキーワードを洗い出し、改革色が強いのか、既存政策の推進に主眼が置かれているのかなどを分析・議論した。
また、時系列データではない質的データを扱うことになるテキストマイニングと親和性の高いAI(人工知能)・機械学習も金融・経済の分析において重要性が増している。
筆者の職業はAIに奪われるのか?!
AIの研究を行っているオックスフォード大学の学者2人が公表して話題になった論文「雇用の未来 ― コンピューター化によって仕事は失われるのか(The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?)」によると、「エコノミスト」が今後10~20年のうちに消滅する確率は43%とされ、筆者も気が気でない。
今後、「エコノミスト」が生き残るためには、AI・機械学習を利用する立場になり、AI・機械学習が「できること」と「できないこと」を把握し、上手に付き合うことが重要になるだろう。
そこで、今回は市場のエコノミストにとって重要な業務の1つである「BOJ(日銀)ウォッチ」を、AI・機械学習がどの程度上手に「こなす」ことができるかを検証した。日銀ウォッチとは政策を決定する最高意思決定機関である政策委員会やその周辺の言動や論文をフォローし、分析して政策予測を行うことである。
今回は、具体的には、準備段階として日銀の9人の政策委員の講演テキスト(2017年以降)をテキストマイニングすることで、①各委員の特徴的なキーワードを抽出し、②各委員の発言の類似度を示した。次に、同様に講演テキストを用いて機械学習を行い、各委員の発言を「タグ付け」する分類器を作成し、正しく委員の発言を分類できるかどうかを検証した。AIは日銀政策委員の発言の特徴を見極めることができるのだろうか。
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