AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?

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日銀の政策委員が政策運営に際して重視する内容やバックグラウンドはさまざまであり、各委員の講演ではそれぞれの関心のある事柄について、自らの意見を述べるケースが少なくない。そこで、現政策委員9人の2017年以降の講演テキストを用いて、それぞれの委員がどのような単語(今回は「名詞」のみを対象にした)を多く使用したのかを調べてみた。

なお、今年の3月20日に就任したばかりの雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は講演テキストの数が少ないため、就任会見のテキストデータも併せて用いた(以下、当レポートではこれらのテキストデータを分析対象とし、図表等では敬称を省略した)。

今回のキーワード分析では単純に単語の使用頻度を数えるのではなく、「TF-IDF分析」(Term Frequency - Inverse Document Frequency)を用いた。

「TF-IDF分析」は「文書に含まれる単語の重要度」をそれぞれ指数化する分析方法である。その指数は各委員の講演テキストにおける単語の使用頻度(Term Frequency)が高いほど大きくなる一方、すべての委員が共通に用いる単語の使用頻度が高いほど小さくなる(Inverse Document Frequency)。つまり、各委員がそれぞれ特徴的に多く用いている単語の指数は高くなるが、共通して用いている単語の指数は低くなるように調整される。

重要度の違いや特徴的な言葉が浮かび上がる

政策委員の講演テキストに「TF-IDF分析」を行った結果、いくつかの特徴が浮かび上がった。

黒田東彦総裁の単語の重要度はトップが「物価」で、「経済」「わが国」「物価上昇率」「企業」と続く。雨宮副総裁は「物価」が最も重要度が高く、次が「日本銀行」の0.21である。若田部副総裁はトップが「総裁」で以下、「日本銀行」「議論」「物価」と続く。

リフレ派(インフレを促進する政策を主張する人々)で知られる原田泰審議委員は、「QQE」(量的・質的金融政策の略語)という発言の重要度が最も高い。やはりリフレ派である片岡剛士審議委員は「予想インフレ」という言葉の重要度が最も高かった。

布野幸利、櫻井眞、政井貴子の各審議委員はトップが「物価」で次に「経済」であるのに対し、鈴木人司審議委員は「企業」が「物価」よりも重要度の高い言葉であるという結果になった。金融政策を決定するうえで、物価よりも企業活動などの実体経済の動きを重視しているとみられる。

また、ほかにも、原田審議委員の「岩石」や、政井審議委員の「女性」や「金融教育」などの発言も特徴語としてそれぞれの上位30単語にランクインした。

テキストマイニングによって各委員の主張の特徴をつかむことはある程度できそうだ。

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