競売で作品細断!覆面ゲリラ芸術家の自壊劇 謎が多すぎる「バンクシー」の生ける伝説ぶり
『Girl With Balloon』の落札額は、バンクシーの作品史上最高落札額に相当するという。通常、作品の破損はその価値を大きく損なうはず。しかし、この作品は切り刻まれてしまったにもかかわらず、むしろそのことによって作品そのもの以上の価値を持つ可能性がある。
イギリスのモダンアート作品を扱うディーラーの1人は、ニューヨーク・タイムズの取材に「見事なPR行為だった」「これで作品の値段はさらに上昇するだろう」と話している。
この矛盾はグラフィティ作品にも当てはまる。多くの場合、グラフィティは公共スペースや私有地の建物の壁に描かれる「落書き」であるとみなされ、作者は器物損害などの罪に問われかねない。ところが、この「落書き」がバンクシーのものとわかれば話が違ってくる。
ロンドンなどの街中にあるバンクシーの作品は透明のパネルで保護されているものもあり、それを目当てに街を散策する観光客もいる。バンクシーの「落書き」は迷惑行為どころか、描かれた側の保護対象にすらなるのだ。
ちなみに今回の「作品自壊事件」は、サザビーズもグルなのではないかという見方もある。サザビーズは一連の出来事のあとに関与を否定しているが、あのような仕掛けがついた額にオークションハウスの人間が気づかないとは考えにくいからだ。
相変わらず正体不明
最高落札額がついた瞬間に作品を破壊するという行為は、自作の高額取引に否定的な作家による、作品を高値で売買するアートマーケットやオークションハウスに集った富裕層たちへの挑発と考えることもできる。が、作家がオークションハウスと組んでいたとしたら、その意味合いは薄れてしまう。
今回の件はバンクシーとオークションハウスが組んだ「ヤラセ」なのか、もしそうならなぜバンクシーはサザビーズと組むことを選んだのか。真相は現時点ではうかがい知ることはできない。
確かなのは、今回もバンクシーのゲリラ的な行為に大衆やメディア、専門家たちが踊らされたこと、そしてその中心にいる作家の正体は相変わらず不詳であるということだ。
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