競売で作品細断!覆面ゲリラ芸術家の自壊劇 謎が多すぎる「バンクシー」の生ける伝説ぶり

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
バスキアへのオマージュのような作品(写真:INSTRAGRAM/BANKSY

昨年、アメリカを代表するグラフィティ・アーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの展覧会がロンドンで行われた際には、展覧会会場近くの壁にバスキアへのオマージュのような作品を描いたのも記憶に新しい。

バンクシーの創作活動は建物の壁にグラフィティを描くだけではない。ニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、大英博物館などでは、セキュリティの目を盗んで展示室内に勝手に作品を飾ってのけた。2013年にはニューヨークの街全体を舞台に、街中に仕掛けた作品の画像を1日1点ずつウェブで公開するゲリラ展示プロジェクトを展開した。

イギリスにオープンしたディズマランド(写真:Getty Images/Jim Dyson)

2015年にはイギリスに「ディズマランド」と名付けられたテーマパークをオープンしている。事故にあったカボチャの馬車など本家のテーマパークをあざ笑うかのようなインスタレーションが多数並んだ「悪夢のテーマパーク」は約1カ月で会期を終え、解体された資材や設備はホームレスの難民たちのためのシェルター建設に再利用された。

さらに昨年は、キリスト生誕地とされるヨルダン川西岸ベツレヘムにホテルを建設した。このホテルの売りは窓からパレスチナとイスラエルの分離壁が見えるという「世界最悪の眺め」だ。

バンクシーがベツレヘムに建設したホテル(写真:REUTERS/Ammar Awad)

「バンクシーされた」人々

予測不能、神出鬼没のストリートアーティストであるバンクシーは、ギャラリーや美術館のホワイトキューブに収まろうとはしない。

今夏、ロシア・モスクワでバンクシーの展覧会が行われた。しかし、バンクシーは「一切関わっていない」と表明し、自身の作品を鑑賞するのに入場料がとられていることに不快感を示した。あくまで作品にアクセスできる人を選ばないパブリックスペースがこの作家の主戦場であり、世界中のどんな場所もキャンバスになりうる。

バンクシー『少女と風船』(写真:REUTERS/Luke MacGregor)

サザビーズでの一連の出来事がそうであるように、バンクシーのプロジェクトの多くは権威や権力、大衆の欲望に疑問を投げかけ、挑発する。サザビーズのシニアディレクターは、今回の一件に際して「It appears we just got Banksy-ed.(どうやら私たちは『バンクシーされた』ようだ)」とのコメントを発表した。

「バンクシーされた」のはオークションハウスだけでなく、その場に集まったバイヤーたちも同様だろう。

次ページサザビーズもグル?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事