サッカーも財政も危うくなってきたイタリア 「適当に見えて最後の防衛線は守る」はずが…

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こうしたイタリアをめぐる緊張に歯止めをかける政策手段も乏しい。

欧州債務危機時には金利が急騰したギリシャやポルトガルの国債をECBが流通市場で機動的に買い入れをする証券市場プログラム(SMP)という仕組みが存在し、金利上昇に一定の抑制効果を発揮した。だが、すでにこの仕組みは失効し、ECBの新たな国債購入策(OMT)は、イタリアがEUの財政救済基金(ESM)を通じた金融支援を要請し、ESMの支援能力不足からECBが必要と認めた場合、買い入れを開始する。

EUの財政規律の受け入れを拒否しているイタリア政府がEUに支援要請をする可能性は少なくともこの段階では低く、市場の緊張を緩和する機動的な政策手段は見当たらない。

カテナチオとファンタジスタの伝統が崩れた?

イタリアサッカーが誇るカテナチオとファンタジスタの伝統は、最近、崩れかけている。

今年夏にロシアで開催され、日本代表も活躍したワールドカップの本選出場国にイタリア代表の名前はなかった。イタリアの予選敗退は1958年大会以来のことで、2006年のドイツ大会で4度目の優勝を果たした後は、国際大会で目立った戦績を残せていない。

ひるがえって現在のイタリア財政を取り巻く環境をみると、かつては政治家の暴走に歯止めをかけてきた官僚はポピュリストの勢いに意気消沈気味、金融市場の緊張に機動的に対処する政策手段も見当たらず、堅牢な守備網にほころびがみられる。イタリアの復活に期待したい。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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