サッカーも財政も危うくなってきたイタリア

「適当に見えて最後の防衛線は守る」はずが…

トリア財務相はポピュリスト政権をなんとか説得しようとしたが……(写真:REUTERS/Tony Gentile)

カルチョ(イタリア語でサッカー)の国イタリアの代表チームは、サッカーワールドカップで優勝4回を誇る強豪だ。そのサッカーの特徴は、カテナチオ(イタリア語でかんぬき)と呼ばれるゴールに鍵をかけたかのような堅牢なディフェンスと、一瞬のひらめきと巧みなボールさばきで敵を翻弄するファンタジスタ(イタリア語で魅了する人)、戦術家として名立たる指揮官の存在が挙げられる。イタリアの国家運営もそのサッカースタイルにどこか似ている。

イタリアは先進7カ国(G7)の一角を占める大国だが、これまで幾度となく経済・政治危機に見舞われてきた。

長年の放漫財政、慢性的な低成長、競争力低下が問題視され、単一通貨ユーロの導入以前には、通貨危機、物価高、高金利体質にも苦しめられてきた。最近でも欧州債務危機の余波がイタリアに及ぶことや、銀行の不良債権問題が不安視された。

また、1990年代には汚職問題で伝統的な諸政党が一掃される政治危機を経験している。汚職の蔓延や少数政党の乱立で政治が機能不全に陥ることも多く、非政治家の官僚(テクノクラート)が一時的に国家運営を任される。危機に見舞われるたびにイタリアはその脆弱性をあらわにしてきたが、それと同時に驚くべき耐性を誇ってきた。

ポピュリスト政権に高まる金融市場の不安

イタリアは数多くの傑出した人物を輩出してきたことでも知られる。古くは欧州統合の父の一人に数えられるアルチーデ・デ・ガスパリ元首相、最近では欧州債務危機克服の立役者と称されるECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁などが好例だ。適当そうに見えて最後の防衛線はしっかりしている国、それを支える有能な官僚やワールドクラスの指導者がいる国、それが筆者の抱くイタリアの印象だ。

そのイタリアでは今年6月、政治刷新を目指す「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」のポピュリスト2党による連立政権が誕生し、財政運営をめぐって金融市場の不安が日増しに高まっている。

最低所得保障の導入、フラット税率の導入、年金の支給開始年齢の再引き下げ、付加価値税(VAT)の引き上げ撤回、公共投資の拡大など、両党が公約に掲げた政策を実現しようとすれば大幅な財政拡張が避けられない。これはEU(欧州連合)の財政規律に抵触するおそれがある。

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