サッカーも財政も危うくなってきたイタリア 「適当に見えて最後の防衛線は守る」はずが…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

当初、両党の関係者は公約実現に意欲を見せつつも、任期中の段階的な公約実現で財政赤字規模を抑制し、EUとの全面対立を避けようとした。

10月4日に新政権が発表した改定後の経済財政文書(DEF)では、2019年の財政赤字の対GDP(国内総生産)比率(以下、赤字比率)を2.4%、2020年が同2.1%、2021年が同1.8%と漸進的な赤字削減を見込む。

公的債務残高の対GDP比率(以下、債務比率)も2018年の130.9%から2021年に126.7%へと低下する計画で、EU側の理解を求めようとした。

だが、経済財政文書の発表を受け、加盟国の財政運営を監視する欧州委員会は、EUの財政規律に抵触する重大な懸念があるとの書簡をイタリア政府に送った。イタリア政府は今後、経済財政文書を肉付けした予算案を作成、10月15日までに欧州委員会に提出する。欧州委員会は提出された予算案に重大な規律違反のおそれがある場合、予算案の受領から2週間以内に差し戻し、再提出を求める。

欧州委員会による最終的な意見表明は、提出された予算案を精査のうえ、11月上旬に予定される経済見通しの発表を待って、11月末までに行われる。イタリア政府は欧州委員会の意見勧告に基づき予算案を修正し、12月末までに上下両院で予算案を可決する必要がある。

トリア財務相がポピュリストの説得に失敗

新政権で経済財務相を務めるジョヴァンニ・トリア氏は経済学者出身の非政治家で、これまで新政権の公約実現と財政規律順守の間でバランスを取る発言を繰り返してきた。

そのため、新政権の実質的な指導者である五つ星運動のルイジ・ディマイオ党首(副首相兼産業雇用相)や同盟のマッテオ・サルビーニ党首(副首相兼内務相)と、EUとのパイプ役を果たすとみられてきた。また、経済財務省の事務方トップや局長級ポストには前政権時代からの規律重視派が留任し、政治家の財政拡張に歯止めをかける役割が期待されてきた。

だが、今回の計画からはトリア経済財務相や官僚が政治家の説得に失敗したことが示唆される。

次ページドイツ国債との利回り差は3%を超す
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事