各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩

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中国の王毅外相も「多国間主義」、「国際秩序」を主張したが……(写真:Ye Aung Thu/Pool via REUTERS)

同じ米国批判でも、中国の場合は少々趣が違った。

登場したのは王毅外相で、膨大な貿易赤字を理由に制裁関税をかけるアメリカの対応を「保護主義だ」などと時間をかけて批判したのは当然だろう。

王外相は英仏の首脳同様、多国間主義の重要性についても触れた。「われわれは現在の多国間主義を維持するのか、単独行動主義に好きにさせるのか。今の国際秩序を維持すべきか、腐敗にむしばまれることを許すのか。これは人類の運命にとって極めて重要な問題だ」などと滔々と論じた。一般論としてはその通りだ。

しかし、その先に中国の手前味噌な主張が並ぶ。「中国は一度も多国間主義に対する信念が揺らいだことはない」「中国は多国間主義への関与を維持し、そのチャンピオンであり続ける」というのだ。さらに、ウィンウィンの協力関係、規則や秩序にのっとって行動する、他国の主権や独立を尊重するなどの原則が重要だと述べている。

こうなるとアメリカ同様の自国中心主義が透けて見えてくる。また、南シナ海や尖閣諸島などでの行動をみても、中国の言っていることとやっていることの乖離が大きすぎて、とても信用できるものではない。中国の場合は国連総会という場を、自己正当化のキャンペーンに利用していると見たほうがよさそうだ。

昨年と様変わり、本音が透けて見えた北朝鮮

そんな中、非核化をめぐってアメリカとの駆け引きがヤマ場を迎えている北朝鮮の演説は、本音が透けて見えて面白い。

登壇者は李容浩(リ・ヨンホ)外相だった。李外相は昨年の国連総会でも演説した。この時は初登場のトランプ大統領が北朝鮮について、「ならず者の体制だ」「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」などと徹底的に批判した。

その直後だったこともあって李外相は冒頭からトランプ大統領を敬称なしで徹底的に批判した。「トランプは精神的に錯乱し、誇大妄想と自己満足にあふれた人物だ」「就任から8カ月でホワイトハウスを、お金を計算する音があふれる場所にし、国連をお金が尊敬され、血を流すことが議事日程となっているギャング団の巣にしようとしている」と、北朝鮮らしい激しい言葉を並べた。

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