各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩

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北朝鮮はどうしても再び米朝交渉を進展させたい。写真は6月の米朝首脳会談(写真:REUTERS/Jonathan Ernst)

ところが今年は大きくトーンが変わった。

一連の南北首脳会談と先の米朝首脳会談の成果を詳しく紹介したうえで、米朝関係が膠着状態にある最大の理由が、相互に信頼関係がないためだと主張した。しかし、批判の矛先をトランプ大統領には向けなかった。「アメリカの国内政治の問題だ。政治的野党は北朝鮮を信用できないと言うのが仕事だ。そして政府に非合理な単独行動的な要求を北朝鮮にさせようとしている。その結果、円滑な対話や交渉ができない」と述べて、慎重に言葉を選びながら、トランプ大統領批判を巧みに避けつつ、米国の対応を批判している。

細部に神経を使った演説の構成は、北朝鮮が何としても米朝交渉を進展させたいと考えていることが伝わってくる面白さがある。

トランプ大統領に、あの手この手で対抗

各国首脳の演説に共通していたのは「多国間主義」の支持であり、トランプが推し進める「単独行動主義」「自国中心主義」への危機感だった。痩せても枯れてもアメリカはまだ世界を動かす大国であり、トランプ大統領の一挙手一投足が、各国の政治、経済、安全保障に大きな影響を与える。

そしてトランプ大統領をストレートに批判しても逆に反発を買うだけで、状況は何も変わらない。かといって黙って見ているわけにはいかない。ではどうすればいいのか。あの手この手で何とか状況を変えたいと苦悩している各国首脳たちの姿が、今回の演説から浮かび上がってきた。

薬師寺 克行 東洋大学教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年より東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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