全国の大学で「農学部」が次々新設されるワケ キャンパスに「ノケジョ」が闊歩する

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農学部の変化で注目すべきなのは、女子学生ノケジョの増加だ。文科省の調査では2017年の女子学生比率は45%と半数近い。筆者は40年以上前に農学部に在籍した。当時はクラスに一握りしか女子学生はいなかった。8年前から首都圏にある大学の農学部で兼任講師として教えているが、確かにキャンパスの光景は様変わりだ。

この間の変化は学生数だけではない。教室で前の席に座るのは女子学生。手を挙げるのも女子学生。成績が上位なのも女子学生のような気がする。とにかく元気なノケジョが目立つ。時折「頑張れ男子学生」と叫びたくなるほどだ。

龍谷大学農学部教務課の糸井照彦さんは「国家資格の管理栄養士を目指す食品栄養学科の場合、女子学生の比率は7割以上。農学部というと第1次産業というイメージがあったが、食ビジネスにまで対象が広がり、女子学生にも魅力的になった。これは全国のトレンドではないか」と話す。獣医師系の学科でも女子学生比率は高い。農学部が男の世界という時代は、完全に過ぎ去ったと言えるだろう。

広がる新しい挑戦

相次ぐ新参勢力の台頭に刺激を受け、既存の農学部でも変革の動きが広がっている。9月18日、奈良市の近畿大学農学部で、農業知的財産に関する新講座の第1回講義が開かれた。

農水省と連携し、農林水産分野の知財に詳しい人材を育てるのが目的。農水省の杉中淳予算課長(前知財課長)が、2年生を前に制度の解説や国際的な動きを講義した。正規の授業として15回行われる予定だ。「日本の大学としては初めての試みだ」と近畿大学農学部の伊藤博樹事務長は言う。

同大学は養殖マグロなど独創的な研究で注目されているが、「農業を取り巻く幅広い分野で、多角的に学べる強みを発揮したい」(伊藤事務長)と力説する。

日本全国の農学部で、新しい挑戦が始まっているようだ。

山田 優 農業ジャーナリスト

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やまだ まさる / Masaru Yamada

日本農業新聞を経て、農業ジャーナリスト。

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