「クール」なリーダー像が変わる
HBSに留学して驚いたのが、起業を「クール」だととらえている人が非常に多いことだ。起業経験のある学生には尊敬のまなざしが向けられるし、起業家出身の教授の授業はより実践的であると人気が高い。ある授業で、教授が「将来、起業したいと思っている人?」と質問したとき、8割以上の学生が手を挙げたのが印象的だった。
もともとアメリカでは、起業家が社会から尊敬され、高い能力を持つ人々は大企業でなく、起業を目指すことが多い。しかし、それだけではない。ここの学生たちは、時代の変化を肌で感じているのではないかと思う。情報革命が進むにつれて、組織は小さくなり、環境変化のスピードも加速している。そんな世界では、巨大な船の舵を切るより、小型高速艇で波を読みながら突き進むほうが面白いと感じているのかもしれない。
どんな大企業も、もともとは誰かが起業して、それを大きく育てたのだ。リーダーとは指導者・統率者という意味だが、多くの人を率いて既存のビジネスを拡大するだけでなく、たとえ小さな船であっても、先陣を切ってビジネスの「起点」を作り出すことこそが、今、あらためて求められているように思う。
HBSの今回のカリキュラム変革が持つ意味は大きい。起業を900人全員が体験すべき「義務」であると位置づけ、短期間であるにせよ、必ず起業体験を持つ卒業生を輩出しつづけることで、変わり行く時代の先陣を切るリーダーを生み出そうとしている。
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