ハーバードの名物授業が“世代交代”する? エリートたちに義務化された“スタートアップ実習”

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どんなビジネスを起業しているのか?

冬休み明けの1月末、厳しい寒さと大雪が続くHBSキャンパスは熱気に包まれる。各チームは、自分たちのビジネスアイデアを練り、試作版作りに取りかかっている。

多様なバックグラウンドの学生が集まるHBSだけに、起業するビジネスも幅広い。料理学校の学生をプライベートシェフとして自宅に派遣するビジネス。数時間単位で現役MBA生をコンサルタントとして雇えるビジネス。独立系クリーニング店向け店舗管理システムの開発と販売。特定のコミュニティ内のみで使える中古品売買ウェブサイト、といった具合だ。

私はと言うと、元グーグルエンジニア、元国際機関職員、元医者、元コンサルタント、元バンカーのチームメイトとともに、少人数ディナーを簡単に企画できるウェブサイトを立ち上げた。OpenTableやFacebookといった外部サービスと連携し、サイト上でディナー企画、レストラン予約、参加者招待、出欠管理ができるようにした。

ビジネススクールでは毎晩、至るところで少人数でのディナーが開かれている。そうした生活をするうち、企画の手間を省くサービスの需要があると考えたのだ。そこで、まずはターゲットを大学コミュニティに絞り込み、ボストンに約100校あるといわれる大学をあたることにした。

「とりあえずやる」をたたき込む

華々しいビジネスであっても、ほんの数人での小さなプロジェクトであっても、事業とは表舞台には出ない小さな作業の積み上げで成り立っている。しかし、HBS生の前職はというと、コンサルティングや金融機関が多い。つまり、事業を外野からしか見たことない人が多いのだ。そのためなのか、頭の回転が速く、口が達者でも、細かく地道な作業を嫌がる人も多い。

しかし、いざ起業するとなると、口先だけでは何も進まない。ある程度、方向性を見いだしたら、「とりあえずやってみよう」と手を動かして試し、そのうえで少しずつ調整していけばいいのだが、その経験が少ないため、どうしても腰が重くなりがちだ。

私のチームは、大学近辺のレストランと提携する必要があると考え、まずは営業上の戦略について話し合った。「レストランにとってのメリットは何か?」「売り上げはどのように分配するか?」など、いろいろ議論をするのだが、なんと、実際には誰も営業に行きたがらない(笑)。このままでは何も進まないので、最終的には手分けして、大雪の中、1軒1軒、飛び込み営業をした。

スタートアップ実習が進むについて、「あれこれ言う前に、とりあえずやってみよう」というマインドがしだいに培われてくる。失敗や拒絶を恐れていては、何も進まない。完璧主義者が多いHBS生に対して、スタートアップ実習は失敗や拒絶に慣れさせ、フットワークを鍛えてくれる。

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