カイゼン経営が途上国の発展に寄与するワケ ベトナムとタンザニアで明らかになったこと

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トヨタ式カイゼンのトレーニングは、途上国の経営者にも効果を発揮することが明らかになった(写真:josefkubes/iStock)
教育経済学者・中室牧子慶應大学准教授監修による本連載では、気鋭の経済学者(と博士課程に在籍する学生)が、最新の研究成果をわかりやすく解説していきます(連載の趣旨はこちらをお読みください)。なお本記事内の[1]〜[8]の数字は参考文献等に関する注記です。参考文献等は最終ページに掲載しています。

近年、経済学で注目されているテーマの1つに「経営」がある。

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伝統的な経済学においては、企業は労働と資本を投入物として利潤を最大化しているブラックボックスとして描かれ、企業の内部で何が起こっているか、つまり企業の経営については議論されてこなかった[1]。そのせいか、企業の経営陣からは、経済学は実際のビジネスには役立たずだと思われていることも多い。

経営を指標化する手法が開発された

しかし、2000年代半ばから、様子がかわってきた。かつて、各企業の経営を定量化することは困難であったが、アメリカ・スタンフォード大学のNicholas Bloom教授とマサチューセッツ工科大学のJohn van Reenen教授の研究成果により可能になった。経営者へのインタビューに基づいて経営を指標化する手法が開発されたのである[2]。

こうして数値化された指標を用いた分析により、経営のよくできている企業はそうでない企業と比較して、規模などを考慮したうえでも業績がよく、生産性が高いことが明らかとなった。

また、同族企業はそうでない企業よりも経営ができていない、国有企業は私有企業よりも経営ができていないといった知見が、過去十数年の実証研究により積み上げられてきた[3]。

筆者が専門としている開発経済学は、貧しい国はなぜ貧しいのか、どうすれば貧しい国が豊かになれるのか、ということを経済学の視点から研究している[4]。途上国の経済を専門としている筆者がなぜ、企業の経営を考える必要があるのか。

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