実験でわかった「貯金をできる人」になる方法

エチオピアで零細企業家426人を対象に実験

人が変わるには知識と意識がともに大切だ。中央はアフリカで研究する筆者(写真:真野裕吉)
教育経済学者・中室牧子慶應大学准教授監修による新連載「経済学で読み解く現代社会のリアル」では、気鋭の経済学者(と博士課程に在籍する学生)が、最新の研究成果をわかりやすく解説していきます(連載の趣旨はこちらをお読みください)。なお本記事内の[1]〜[19]の数字は参考文献注記です。参考文献は最終ページにまとめて英文で掲載しています。

夜中のラーメンやダイエット中のケーキは「体によくない」。頭ではわかっていても、つい食べてしまう。ところが、経済学の伝統的なモデルでは、知識さえあれば人は合理的に行動できる、と仮定する。

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モデルを単純化することで、経済全体の資源配分の問題(たとえば経済成長や雇用、エネルギー需給の問題など)により深く切り込むことができる、という利点がある。これは、ランドマークを記しただけの単純な地図が便利なのと似ている。

さて、科学の実験では対象物に合わせて、顕微鏡のレンズを取り替え、ピントを調整し直す。同じように、経済学の伝統的なモデルに適切な調整を施すことで、個人の行動を理解できるようになるか考えてみたい。

途上国の零細企業家は貯蓄がうまくない

金融の知識さえあれば資金を貯めることができるだろうか。零細企業家にとって資金の調達は重要な経営課題である。とりわけ、金融市場が十分に整備されていない発展途上国では、資金の借り入れは容易ではない。

そこで、利益の一部をコツコツと貯めることが重要となる[1]。うまく貯蓄できれば、さまざまなリスクに備えることもできるし、設備投資を行い、雇用を増やして、事業を拡大することもできる[2]。

ところが、筆者が調査でたびたび訪れるアフリカやアジアの各地で出会う零細企業家の多くは、どうもあまり貯蓄をしていないようである。もちろん、経営が厳しく、そもそも貯蓄できるほどの利益がないということが原因のひとつと考えられる。しかし、途上国の貧しい世帯や零細企業だからといって、必ずしも余剰がないわけではない。

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