実験でわかった「貯金をできる人」になる方法 エチオピアで零細企業家426人を対象に実験

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また、彼らは貯蓄の意志もあり、さまざまな貯蓄手段も利用可能なことが多い[3][4][5][6]。たとえば、日本の無尽や頼母子講のように、仲間同士で定期・不定期にお金を持ち寄り、あらかじめ定めたルールに従ってそれを分配する仕組みなどがそれに当たる。

それでは、こうした零細企業家たちはなぜうまく貯蓄できないのだろうか。

まず、金融の仕組みや利用可能な金融サービスについてよくわかっていないために、うまく貯蓄できず、せっかくの投資の機会を逃すということがありうる。さらに、商売が思うようにいかず、金融サービスを利用する機会からますます遠ざかるという可能性もある[7][8][9]。

また、零細企業家はとても忙しく、いつも貯蓄のことだけを考えているわけにはいかない。生産や販売など処理すべき経営問題は山のようにあるし、家事の分担や子どもの教育など家庭の問題、友人や近所とのつきあいなど、日々いろいろなことに頭を悩ませている[10]。

既存の研究ではわからない

今回の執筆者:真野裕吉(まの ゆうきち)/一橋大学大学院経済学研究科准教授。1999年東京都立大学卒業。2007年シカゴ大学経済学部で博士課程修了(Ph.D)。政策研究大学院大学を経て、現職。専門は農業生産性の向上や産業発展、教育や医療の普及など、発展途上国の貧困を解消するための方法を研究する開発経済学(写真:真野裕吉)

最初は立派な貯蓄計画を立てても、冠婚葬祭への支出や[11]、親戚や友人からの無心[12][13]、あるいは、ついタバコやギャンブルの誘惑に負けて、貯蓄に失敗してしまうこともある。

不慣れな帳簿をつけるのがだんだん面倒になり、余剰金の管理ができなくなることもある[14]。忙しい中で貯蓄をするのはこのようになかなか苦労があるのだ[14][15][16][17][18]。

これまでの研究では、貯蓄がうまくいかない原因として、こうした知識不足と注意不足のいずれか一方のみに注目することが多かった。しかし、これら2つの重要性を互いに比較、あるいは両者を合わせた総合的な効果を検証する研究はあまりみられなかった。

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