カイゼン経営が途上国の発展に寄与するワケ ベトナムとタンザニアで明らかになったこと

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それは、貧しい国が豊かになるためには、現地企業による安定した雇用の創出が必要不可欠となるにもかかわらず、企業の経営が悪いがゆえに、その役割を果たし切れていないからである。

途上国の企業は先進国の企業に対し、経営スコアが低かった。特にアフリカの企業は低いことが確認されている[5]。また、途上国の企業のほとんどが中小零細企業であるにもかかわらず、こうした企業の経営はとりわけ悪いことも明らかとなっている[6]。実際に途上国の企業を訪れてみると、ただちにこのことは感じられる。

きちんとした会計を行っている企業は稀で、帳簿すらつけていない企業も多い。作業場は散漫としており、原材料と仕掛品とが混在していたり、完成品が無造作に床に積み上げられていたりする。

さらには、金属加工をしている町工場を訪れてみると、足場の悪いところで従業員が素手作業を行っているということがざらである。こうした作業効率が悪く無駄の多い経営では、安定した雇用を創出することはおろか、従業員の安全を確保することすら難しい。

ベトナムとタンザニアでカイゼン経営トレーニング

こうした途上国における企業の状況を改善すべく、筆者はベトナムとタンザニアで裁縫業を営む経営者に対して、日本発のカイゼン経営を教えるという研究を行った。

筆者は研究に際して、名古屋に本部を置く一般社団法人・中部産業連盟にベテランのコンサルタントの派遣を依頼し、トヨタ式カイゼンのトレーニングを提供した。

その際に、カイゼン経営研修の効果を測定するため、研修を提供するグループとそうでないグループとを無作為に分けるという、社会実験の手法を用いた。RCT(Randomized Controlled Trials、ランダム化比較対照実験)と呼ばれる方法である。

RCTは、臨床医学における治験の考え方に基づいている。研修を受けたグループの経営者(処置群)と受けていないグループの経営者(対照群)を比較することで、研修の効果を厳密に測ることが可能となる。

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