北海道電力が「ブラックアウト」に陥った根因 切り札の「北本連系線」は機能を発揮できず

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今回震度7を観測した厚真町にある石炭火力発電所、苫東厚真(とまとうあつま)発電所。発電能力は、道内の発電所の中で最大だった(写真:共同通信)

震度7の大地震を機に発生した北海道電力の「ブラックアウト」(ほぼすべての発電所の一斉停止)。9月8日には北海道のほぼ全域で停電が解消するメドが立ったとされる。だが、当初北電や電力会社間での電力融通を取り仕切る「電力広域的運営推進機関」(略称、広域機関)が有効な回避策を講じることができなかったことについて、専門家から疑問の声が持ち上がっている。

安定供給対策を進めてきたが・・・

世耕弘成経済産業相は9月7日の記者会見で、北電が従来から電力の安定供給対策として、①過去に起きた最大規模の電源脱落(想定外の発電所停止)を想定したうえでの、大規模停電を回避するための技術的検証の実施、②石狩湾新港LNG火力発電所(北海道小樽市)の新設、③(本州との間の)北本連系線の増強、という3つの対策を進めていたと説明した。

そのうえで「大地震の前にLNG火力が完成しており、北本連系線の増強工事が間に合っていれば、今回のように主力発電所の3基(計165万キロワット)が機能を停止した場合でも、持ちこたえることができた。それが間に合わなかったのは残念だ」と悔しがった。

しかし、電力の系統運用に詳しい元東京大学特任教授の阿部力也氏(デジタルグリッド会長)は、世耕氏の指摘には正確さを欠いている点があると指摘する。

「大規模発電所が瞬時に停止した場合には、LNG火力の出力上昇では対応できない。その場合に唯一有効な方策は、北海道と本州との間に設置されている既存の北本連系線を活用し、瞬時に本州から大量の電力を送り込むこと。そうすれば周波数変動の回避を目的とした電源停止の多くを回避できた可能性がある。そうした備えが十分だったのか、検証する必要がある」(阿部氏)

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