大学生にものすごく「睡眠」が必要な根本理由 勉強のためでも徹夜なんてもってのほかだ
そのプロセスで、体内リズムに影響される遺伝子の20分の1が正常に働かなくなる。それらの遺伝子がつくりだす物質が適切なときに分泌されず、認知的な能力と身体的な能力の両方が下がってしまうのだ。スタンフォード大学の研究によると、男子の大学代表バスケットボールチームの選手が最適な長さの睡眠をとると、フリースローとスリーポイント・シュートの成功率が大幅に上がった。
アメリカの5万5000人以上の大学生を対象に行われた調査によると、健全な睡眠習慣を確立できていない大学生は、授業の課題をこなせない可能性が高くなり、学業面での力を発揮できないことも増えるという。
学生たちは授業中に疲れ切っている
この調査を行ったミネソタ州のセントトーマス大学セントポール校のモニカ・E・ハートマンとプリチャードによると、大学生がうまく睡眠をとれない日が1週間あたり1日増えると、授業の単位をとれない可能性が10%上がり、GPA(成績の平均点)が0.02下がるという。
「アメリカでは、大学生の3人か4人に1人は大学を卒業できない」と、プリチャードは言う。「もし睡眠が改善されたら、大学を卒業できる可能性も高まる。睡眠の改善により、悪くなることは何もなく、むしろ多くのことが改善される」。
以前プリチャードはネズミの研究をしていたが、大学でフルタイムで教え始めたとき、「学生たちが疲労し消耗して、やっとのことで眠らないようにしている」のを目の当たりにした。そこで、研究の対象を大学生に変え、質の良い睡眠が得られない理由を解明し始めた。
プリチャードが2010年に発表した共同研究は、1125人の大学生を対象として行われ、「学生の睡眠の状態がよくないのは、ストレスを感じていることが主な理由であることがわかった。アルコールやカフェインの摂取は、睡眠の質を大きくは変えていなかった」という。「多くの学生が抑鬱や不安、ADHD(注意欠陥多動性障害)を抱えていた。それらは睡眠不足により生じるもので、睡眠不足によって悪化するものでもある」。
この発見からプリチャードは、学生たちがストレスと不安をよりよくコントロールするための対策を考え始めた。セントトーマス校の学生健康センターと共同で、プリチャードは新入生向けの朝の集まりを開催し、そこで健康的な朝食を提供して、ストレスのもとになる要因について話し合った。