iPhoneを支えてきたTDK「スマホ電池」の実力 買収から10年超で急成長、スマホの次も模索
米アップルの「iPhone」と韓国サムスン電子の「ギャラクシー」。世界2大スマートフォンの両方で主要電池サプライヤーである唯一のメーカーが、電子部品大手TDKの子会社、ATLだ。
ATLは、TDKが2005年に107億円で買収した香港企業だ。TDKの上釜健宏・前会長が中国に駐在していた際の部下である技術者が1999年にベンチャーとして立ち上げた。この部下が資金力や生産技術を頼ってTDK側にアプローチし、買収へとつながった。
2017年度は売上高3700億円、20%弱の営業利益率をたたき出した“ドル箱”事業で、利益はTDK全体の6割に上る。2018年度は4000億円の売上高を見込む。スマホなどの携帯電話向け電池市場では、2位の韓国サムスンSDIの2倍近い世界トップのシェアを握っている。
利益率でも群を抜くATLの優位性
収益性でも差は大きい。韓国LG化学の電池事業は、営業利益率が1%にも満たない。サムスンSDIと、村田製作所(2017年に旧ソニーの電池事業を買収)に至っては、いずれも営業赤字だ。ATLが巨額投資を要する車載用電池を手掛けていないことを加味しても、強さは明らかだ。
ATLの優位性は何か。電池市場に詳しいテクノ・システム・リサーチの担当者は、「受注した大口顧客の製品がヒットしたことが大きい」と分析する。買収当時、ATLは「iPod」や携帯型DVDプレーヤーなどに電池を供給。その後スマホが普及し、ATLの薄いパウチ型電池(上写真)の需要が急増。iPodで実績があったATLはアップルに認められ、iPhoneに採用。その勢いでサムスンにも食い込んだ。TDKは設備投資や生産技術で全面支援した。
さらに成長著しい中国のスマホメーカーはiPhoneを開発の指標にしており、ATLは彼らに供給する場合でも大きな仕様変更を必要としないのも強みだ。2大スマホメーカーや中国勢を顧客に取り込んだATLは同じ仕様の電池を大量生産し、材料購買や生産でも規模のメリットが生きている。
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