ニコン、出遅れた「高級ミラーレス」の本気度 屋台骨の一眼レフ事業とは食い合うのか
真夏日となった8月23日午後1時、東京都内のイベント会場。その場に居並んだ大手カメラメーカー・ニコンの経営陣らは、外の暑さに負けない熱気と緊張感を漂わせていた。
3年ぶりのミラーレスカメラへの再参入――。昨年創業100周年を迎えたばかりのニコンが、次の100年に向けた製品として力を込めたのがミラーレスだった。新製品の披露にあたり、手の込んだ特設ウェブサイトを開設し、発表会は全世界にライブ配信され、英語と中国語の通訳も入るという気合いの入りようだった。
新たなミラーレスのシリーズの名は「Z」。牛田一雄社長によれば、「究極」、「最高」を意味するという。今回ニコンが投入するのは中高級価格帯の製品だ。ボディには2種類あり、日本では上位機種「Z7」が9月下旬に店頭予想価格44万円、もう一方の「Z6」は11月下旬に同27万円程度で発売される。
約60年使われてきた「マウント」を刷新
今回発表したZシリーズには、ただ高いカメラを出しただけではないニコンの方向転換が現れている。それが「マウント」の刷新だ。マウントとはカメラ本体とレンズの接合部の規格のことで、メーカーごとに規格が異なる。アダプターをつけない限り他社のレンズを使えないようにすることで、カメラメーカーは交換レンズの販売で継続的な収益を上げている。
今回発表したミラーレスには、1959年からニコンが一眼レフで長らく展開してきた「Fマウント」の代わりに、より口径が大きい「Zマウント」と呼ばれる新たな規格を採用した。口径を大きくすることでより多くの光を取り込めるようにして、より鮮明な写真を撮影するニーズに応えるためだ。Fマウントに改良を加えるだけでは限界があった。
「新次元の性能を実現するため、思い切ってマウントを変えた」。土田貴実・マーケティング統括部長はそう説明する。マウントを変えるということは、これまでニコンファンが集めてきたFマウントのレンズ資産は、アダプターでつながないとZで使えなくなることを意味する。それだけ大きな懸けとなる。
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