ニコン、出遅れた「高級ミラーレス」の本気度 屋台骨の一眼レフ事業とは食い合うのか

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一眼レフの商品群を持たないソニーはミラーレスでの性能向上に振り切ることができたが、一眼レフの世界2強であるニコンとキヤノンは、一眼レフとのカニバリゼーションを起こす恐れから、これまでミラーレスには及び腰だった。

これまで一眼レフを中心に商品展開してきたニコン。ミラーレスとのカニバリは起こるのか(撮影:尾形文繁)

だが、市場の盛り上がりを受けて両社ともミラーレスに本腰を入れる必要性を痛感。キヤノンはニコンのNikon 1に遅れること1年、2012年にミラーレスの展開を始め、2015年頃から商品群を拡大させている。まずエントリー機を発売し、少しずつ中価格帯へと近づけてきた。

ニコンがいきなり中高級機でミラーレス市場に再参入した理由として、前出の土田部長は、「ミラーレス市場では高解像度への需要が増えている。新しい価値体験を提供するため中高級機から出した」と話す。今後のミラーレスの具体的な方向性は示されなかったが、「高付加価値品を中心に展開する」(牛田社長)という。

「一眼レフの需要はまだまだある」

高級ミラーレスを充実させることで、ニコンの主力である一眼レフとカニバリゼーションを起こさないのか。牛田社長はこの点について、一眼レフ市場は年々縮小しているものの、「高級カメラを使う客が今後減ることはない」と根強いファンの存在を意識する。実際、ニコンが2017年に発売したハイアマチュア向け一眼レフ「D850」は約40万円という価格ながら大ヒットし、品薄状態が続いた。

Zシリーズの発売で、ニコンはミラーレス市場のシェアを拡大できるか(撮影:梅谷秀司)

今後もミラーレス市場そのものでは増加を見込むものの、一眼レフとミラーレスの開発を並行して続けながら、顧客の需要動向を見極める構えだ。

一眼レフが緩やかに縮小する中で、ニコンはミラーレスでも存在感を見せられるのか。牛田社長は「ミラーレスの目標はシェアナンバーワンだ」と力を込める。今回満を持してお披露目したZシリーズが、今後のカメラ事業の行方を左右するといっても過言ではない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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