祖父母が孫を溺愛するべきではない根本理由 「内緒で小遣い」は自己満足そのものだ

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爺婆がそのような「お節介愛」を続ければ、なにより息子・娘は、自分の親を頼るようになる。孫は、祖父や祖母に甘えるようになる。

「まあ、今回はお父さんに頼もう」「お母さんに預かってもらいましょう」。そして自分たち夫婦は2人で高級ホテルのレストランに出かける。共稼ぎのために預けるのは仕方がない。食事ぐらいならまだいいだろう。ところが、子どもを預けて、1週間も10日間も海外旅行に出かけるような夫婦もあるらしい。

「うちの子たちは、おじいちゃんやおばあちゃんに懐(なつ)いているから心配ないのよ」

自分の子を犬や猫じゃあるまいし、祖父母に懐いているから預けていいというものではないだろう。

成長につれて孫の出来がよくないと、息子や娘は間違いなく愚痴を言うようになる。「おじいちゃんが甘やかしたから」、「おばあちゃんが世話をやき過ぎたから」と言うはずだ。

どこまでも、自分の子供の世話をする、面倒を見るというのが親の責任。それが親の愛情というものだ。しかし、自分の息子や娘が、そのようなことを言うようになるのは、爺婆の孫溺愛の結果だろう。息子や娘の親としての自立心や自覚がなくなるのは、祖父祖母が孫の世話を喜ぶからだ。

「人間としての自立心」が育たなくなる

さらに言えば、おおよそ祖父祖母が孫を溺愛することは孫への教育としてもよろしくない。孫は、世の中は甘いもので、誰かが助けてくれる、と思うようになる。困ったら祖父祖母のところに行けばいい。小遣いが欲しければ、爺婆のところに行けばいい。両親と祖父祖母を比較して、都合のいい方を選ぶようになる。それでは、孫の「人間としての自立心」は育たない。小賢(こざか)しい人間になるだけだ。安直な生き方をするだけだ。

「じいちゃん、あんたにそっくりだよと人に言われりゃ嬉しくなって、下がる目尻がえびす顔」の祖父祖母は、だから、「最悪の爺婆」と言える。
むしろ「世話をしない愛情」こそ、息子や娘、そして、なにより孫の自主自立、自信を身につけさせる「真の愛情」だ。祖父祖母は孫の世話を喜んでしないほうがいい。

息子や娘の顔を見たら、孫が安心して、飛びついていく。爺婆より「やっぱり、お父ちゃんが好き、お母ちゃんが好き」と言わしめる接し方、面倒の見方を心がけたい。

まあ、とは言うものの、これは、自戒を込めての話ではある。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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