慶應SFCの学生の多くが間違えた「ベイズ理論」の難問。あなたは“論理的思考”が本当にできていますか?数字にだまされないリテラシーを磨くには

「ベイズ理論」に基づく確率の考え方は、世の中で起こっていることを合理的に考えるには非常に有益です(写真:78create/PIXTA)
多くの人は、自分は論理的に思考していると思っています。しかし、実際に簡単なテストをしてみると実に多くの人が、簡単な論理的思考を間違えると、認知心理学者の今井むつみさんは指摘します。それはどういうことなのでしょうか。社会人の基礎的な論理的思考問題を、例を挙げて考えます。
※本稿は今井むつみ氏の新著『人生の大問題と正しく向き合うために認知心理学』から一部抜粋・再構成したものです。
【確率①】確率思考は難しすぎる
私たちは、確率に基づいた推論も苦手です。
この講義では、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(上・下)』(村井章子訳、ハヤカワ文庫NF)を課題図書として、みなさんに「基準率」の話をしました。基準率というのは、「もともとの比率」のことです。たとえば次のようなときに問題となります。
ディックは30歳の男性である。結婚していて子どもはいない。優秀で意欲にあふれ、同僚からも好かれている。
・集団1:30人のエンジニア、70人の弁護士
・集団2:70人のエンジニア、30人の弁護士
・集団2:70人のエンジニア、30人の弁護士
各100人の集団のうち、ディックが30人(もしくは70人)のエンジニアの1人である確率は?
Tversky & Kahneman(1974)を一部改変
要するにこの問題は、ディックのプロフィールを見てその職業を尋ねるものです。提示されたプロフィールには、ディックの職業を連想させる情報はありません。
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