現在も活動する「陰陽師」の知られざる正体

「結界」は日常生活にも存在している

陰陽寮は国家機関(明治2年まで存続していました)ですから、国家の中心である天皇と公家を守るのが大きな仕事でした。天皇が住まわれる御所を、京都を、ひいては日本という国を守る。そのために結界は、その場を悪しきもの、霊的なものの攻撃から守る、という意味合いがあります。

当時、だれかを呪ってほしいとか、死者の怨念から守ってほしいという依頼はほぼひっきりなしにあったといいます。そういう不可思議なものから時の権力者を守るためのもの――そう考えていただくとわかりやすいと思います。

こう書くと、なんとも非科学的な話だと感じる読者もいらっしゃるでしょう。けれど、そこには時代による感覚の違いがあります。

当時といまでもっとも違うものは、おそらく闇に対して抱く恐怖のイメージではないでしょうか。昔の人々は、闇というものに対してものすごく強い恐怖を感じていました。電灯がない時代、闇は本当の闇、漆黒なのです。そこはまさに、人間の力が及ばない物の怪たちの棲む世界だと考えられていました。

これは極論かもしれませんが、ある意味、そうした闇から人々を守るために私たち陰陽師は存在したのです。

大名に仕える「軍師」となった者も

ところが戦国時代になると、各地に「大名」と呼ばれる有力者が次々と現れてきました。そうなると国を守るためには、そういった大名たちも守る必要が出てきたわけです。陰陽寮としてもそれを認めようということで、陰陽師が各地に散っていったという歴史があります。

そうなると、大名たちは都からやってきた陰陽師を家臣扱いにします。そうやって大名に仕える軍師になってしまうことが多かったのです。

正式な家臣になれば、主人である大名を出世させることに熱心になります。成功すれば、陰陽寮に戻ったときに鼻が高くなることでしょう。ましてや主君が天下を取ったり関白になったりすれば、まさに大手柄になるわけです。

と同時に、戦国時代は経済の仕組みも大きく変わりました。

国中の富が天皇のところに集まるというシステムが崩れ、各地の大名がそれぞれの地域で経済を支配するようになったのです。当然、天皇の経済は縮小し、ついにはひっ迫していきます。

そんななかでも私たち陰陽師は国の機関に属する公務員なので、天皇をお守りしなければなりません。ですが、報酬は次第に先細りになっていきます。ほかのスポンサーを見つけないかぎり、一族全員が食べていくことはできなくなったのです。

結局、各家の中心である本家だけが京都に残り、それ以外は地方へと散っていくことになりました。こうして陰陽師は全国に広まり、それが日本中に結界を張り巡らしていく一因となったのです。

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