「お茶」と世界の歴史の意外にも深すぎる関係 アヘン戦争やアメリカ独立戦争の裏側にも
私たちは人類の歴史について、よく知っている。少なくとも、そう思っている。しかし、本当にそうだろうか。私たちが知っている歴史の裏側で、植物が暗躍していたとしたら、どうだろう。
人類の陰には、つねに植物の姿があった。
人類は植物を栽培することによって、農耕をはじめ、その技術は文明を生みだした。植物は富を生みだし、人々は富を生みだす植物に翻弄された。人口が増えれば、大量の作物が必要となる。作物の栽培は、食糧と富を生みだし、やがては国を生みだし、そこから大国を作りだした。富を奪い合って人々は争い合い、植物は戦争の引き金にもなった。
兵士たちが戦い続けるためにも食べ物がいる。植物を制したものが、世界の覇権を獲得していった。植物がなければ、人々は飢え、人々は植物を求め、植物を育てる土地を求めてさまよった。そして、国は栄え、国は亡び、植物によって、人々は幸福になり、植物によって人々は不幸になった。
歴史は、人々の営みによって紡がれてきた。しかし、人々の営みには植物は欠くことができない。人類の歴史の陰には、つねに植物の存在があったのだ。
拙著『世界史を大きく動かした植物』でも詳しく解説しているが、一例がアヘン戦争やアメリカ独立戦争の要因にもなった「チャ」だ。
不老不死の薬
秦の始皇帝が「不老不死」の効果があると信じて飲んでいた薬がある。
これは中国最古の薬とされていて、古代中国の農業の神「神農」は、身近な草木の薬効を自らの体を使って試した。そして、毒に当たるたびに、この薬草の力で何度もよみがえったという。
なんというすごい薬効を持つ植物なのだろう。ところが、秦の始皇帝が憧れたこの薬を、現代の私たちは簡単に飲むことができる。
この霊草こそが「チャ」なのだ。
今では、財布に残った小銭を出せばペットボトルのお茶が買えるし、食堂に入って「お茶をください」と頼めば、秦の始皇帝が憧れた霊草がタダで出てくる。
チャは中国南部が原産の植物である。その昔、チャは持ち運びができるように、固形に固められた「餅茶(へいちゃ)」と呼ばれるものが作られていた。この固まりを削って、煎じて飲んだ。
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