「お茶」と世界の歴史の意外にも深すぎる関係 アヘン戦争やアメリカ独立戦争の裏側にも

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これに追い打ちをかけたのが、金づるであったアメリカの独立である。そこでイギリスが企てたのが、三角貿易であった。

イギリスの産業革命によって大量に工場生産された安価な綿織物は、国内では消費しきれずに、植民地であったインドに輸出された。そして、ついにはインドの伝統的な織物業を壊滅させてしまう。

イギリスは、主産業が壊滅したインドで麻薬の原料となるケシを栽培する。そして、ケシから作りだした麻薬のアヘンを清国商人に売った。

こうしてイギリスは、インドで生産したアヘンを清国に売り、自国で生産した綿製品をインドに売ることで、チャを購入することで流出した銀を回収するという三角貿易を作りだした。

もちろん、清国はこの交易に反発する。そして、アヘンを扱うイギリス商人の荷物を取り締まろうとする清国と、自由貿易の保護を主張するイギリスとの間で、摩擦が激しくなっていく。そして1840年、ついにイギリスと清国との間でアヘン戦争が勃発する。

この戦争で、眠れる獅子と恐れられた清国は、イギリス軍の前にあっけなく敗れてしまう。そして、国力を失った清国は、不平等条約のもとで半植民地状態にされてしまう。

日本にも変化がもたらされる

アヘン戦争によって大国であるはずの清国(中国)が敗れると、西洋諸国のアジアの植民地化の動きが活発化し、東アジアは激動の時代に入る。

清国の敗戦は、隣国の日本にも衝撃を与える。西欧列強の軍事力を見せつけられた日本は、危機感を募らせる。そして、日本を植民地化させてはいけないとの思いから、志士たちがついには江戸幕府を倒し、明治の文明開化から、西欧列強に追いつこうとする近代化へとつながっていく。

ちなみに、富国強兵に取り組む日本の近代化を支えたものもまたチャであった。

当時、西洋諸国が中国に求めていたものが絹製品とチャであった。そこで、日本も生糸とチャの生産に力を入れていく。

大政奉還で15代将軍、徳川慶喜は駿河(現在の静岡県)へ隠居する。そして、多くの幕臣たちが徳川慶喜に従って駿河へ移り住んだ。ところが、明治になって廃藩置県となると、多くの幕臣たちが失職してしまった。

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