若手に「法律違反」を指摘されたときの対処法 「それって違法じゃないんですか?」

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例えば、もう時効でしょうから、人事を生業としてきた私のケースを、恥ずかしながらふたつお話します。ひとつは、ある新人が面接評定表にある「A・B・C・X」という4段階評価の「X」に異議を唱えてきたケースです。もちろん「X」とは「未知数のエックス」とかではなく、「バツ」の意味です。

面接評価がAからCであれば次に進む可能性があったのですが、「X」というのは「ここで選考終了」ということで、わかりやすく「バツ」としていました。新人は、「応募者はバツなどではなく、単に自社に合わなかっただけであり、そんな言い方はおかしいと思う」と素朴で純粋な主張をしてきました。

今ならまったくもってその通りと思うのですが、その時の私は「XをDに変えたら君は気が済むのか。別に言うことはわかるが(実際、後で変えた)、自社に入りたいと熱望している人を不合格にするという重さから逃れられる、免罪されるとでも思うのか。この偽善者が!」とまで言ってしまいました。

すがりつくように入社を希望している人を、私は最終面接官として何人も落としてきました。正直、ものすごく重い罪悪感?を感じています(今でも)。だから、「お前はまだ罪悪感を持つような責任ある仕事をしていないから、手を汚していないからそんなことが言えるんだ」と思ってしまったのです。

しかも、私も新人の頃、実は「X」って嫌だなと思っていたのが、今はもう変わってしまったことに気づき、その若者の純粋さに嫉妬してしまったのだと思います。海よりも深く反省しています。そのときの新人(もう立派な投資会社の社長です)にはこのネタで今でも責められているので、許してください。

恣意的な判断はアンフェアだと思う

2つ目は、適性検査の選考基準をいじった時に、新人が意見をしてきた事件です。最初に設定していた選考基準だと、応募者がどんどん落ちていってしまい、このままだと採用目標に達しないというシミュレーションが出たため、採用活動期間の途中から選考基準を緩めてもう少し合格を出すようにしました。その判断に不服のあった新人2人に私は呼び出され、小部屋で異議を申し立てられました。「不公平だと思います」と。

私は、「もちろん最初の方の厳しい基準で落ちた応募者には申し訳なく思うが、(公務員等は違って)企業には採用の自由があり、(差別的なものとかでなければ)どんな採用基準で採用をしたって問題はない。今回は、期中の変更ということで不公平を感じたのかもしれないが、そもそも毎年基準は変わっている。昨年よりも今年は景気がよく売り手市場なので採用基準は緩いなんてことはふつうにある。それも不公平だと思うか? 同じことじゃないのか?」と言いました。この件の是非はともかく、若者のよくある正義感を示していると思います。

次ページ「何事も公正なルールに基づいて」という潔癖さ
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