日本の「いじめ対策」決定的に欠けている視点 環境整備と学校以外の選択肢拡充が必要だ
いじめを「増やす」ことができるのであれば、「いじめの数は、条件によって増減する」ということが確認できます。そして、「いじめを増やす要因」について考える作業は、そのまま「どの環境を改善すればいじめを抑制できるのか」という発想につながります。
児童のストレスに配慮した教室づくりを行う。先生が特定児童にラベリングをしない。トラブルの初期段階から介入する。集団行動を無理強いしない。相談を受けやすい体制をつくる──。先ほどあげたアイデアを反転させるだけでも、さまざまな解決策が浮かぶでしょう。
「本人の資質」と「環境要因」の双方が関わる
いじめについてこれまでは、被害者と加害者の心理にばかり焦点が当たりがちでした。しかし、いじめなどの行為には、「本人の資質」と「環境要因」の双方が関わります。
大人でも、のびのびとした環境ではにこやかに過ごせますが、ストレス下に置かれれば行動が変わることがあります。ニコニコ優しかった人が、親となり、育児ストレスによって子どもに手をあげるようになってしまった、というのもその典型でしょう。
あるいは、この社会にはブラック企業もあればホワイト企業もある。ハラスメントが多い会社もあれば、少ない会社もある。大人の集団でも、人間同士の組み合わせや環境によって、人々の行動が変わります。会社がつぶれて貧困になった家庭で、父親が荒れだす。その時、周囲の人は、「あの人は、人が変わってしまった」と言います。しかし、その人の行動を変えたのは、環境の変化です。
人は環境で変わる。それは子どもだって同じこと。環境のあり方によって、いじめが増えたり減ったりするのです。
いじめ等の問題が多い教室を、ここでは「不機嫌な教室」と呼びましょう。逆に、児童の満足度が高く、いじめ等の問題が少ない教室を、「ご機嫌な教室」と呼ぶことにします。さまざまな条件がそろうことによって、「不機嫌な教室」や「ご機嫌な教室」が作り出されるのです。
「不機嫌な教室」は、いじめだけでなく、不登校や非行などの問題を生じさせます。そうならないように、「不機嫌因子」を丁寧に除去することも大人の役割です。「いじめを増やす要因」を取り除くことで、いじめは減らせるのです。
いじめ対策というのは、「発生したいじめに対応する」「いじめをしないように教育する」ばかりがすべてではありません。「いじめが起きにくい環境を作る」「人をいじめに追いやる背景を取り除く」「何がいじめ対策に有効なのかを検証する」など、さまざまな対策が必要になります。単純化すれば、いじめ対策は「予防→早期発見→早期対応→検証」のサイクルで回す必要があると言えるでしょう。
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