トランプが起こした貿易戦争の思わぬリスク 関税の応酬は世界経済を衰退させかねない

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アメリカ経済が順調でありインフレ率も堅調のため、 FRB としては早めに利上げを実施して、将来訪れるかもしれない景気後退に備えようとしているわけだ。リーマンショック以降、FRBは長い間ゼロ金利政策と量的緩和を実施して景気回復を促進してきたが、最近は10年を超えた景気回復を逆に心配するレベルまできている。FRBとしては意図的にでも景気が過熱しないようにブレーキを踏みたいわけだ。

トランプ大統領にとっては、意図的にでも景気の上昇を抑えられてしまっては自分の人気に陰りが出ると考え、最近ではツイッターなどで時々ジェローム・パウエルFRB議長を批判するようになってきた。

アメリカの中央銀行は、日本と違って大統領の圧力に屈するほどやわではないが、仮に本来、金融引き締めすべきところを躊躇したりしていると、再びバブルが発生する可能性が出てくる。すでに不動産価格などは高騰しており、本来ならばバブル発生を叩く意味で利上げをすべき段階とも言える。

もともと不動産屋であるトランプ大統領にとって、昔からFRB の利上げには苦々しい印象があり、不動産価格を暴落させかねない利上げには否定的な考え方を持っている。この姿勢が、今後のアメリカ経済や世界経済にどんな影響を与えるのか。仮にもう一度リーマンショック級のバブルが発生すれば、アメリカ経済は何とか持ちこたえるかもしれないが、日本など世界各国が大きな打撃を受けるはずだ。

③ 防衛輸出による経済再生

トランプ大統領が欧州首脳会談で繰り返し主張した「アメリカの防衛にただ乗りするな」という言葉がある。アメリカが世界でもトップクラスの軍事大国であることは周知の通りだが、ここ10年の間に軍事バランスは大きく変化したとされる。

核兵器とかミサイルの数はロシアやアメリカにかなう国はないのだが、実際に稼働できる武器をベースに考えると、ミリタリーバランスはまた違った様相を呈してくる。ロシアや中国は、実際に使用できる武器では、アメリカを大きく抜きつつあるのではないかとさえ言われている。

たとえば、ドローンやロボットを使った戦争では、中国やロシアのほうがアメリカを上回る技術があり、ここ10年の間に技術革新によって生まれた新製品を武器に転嫁する技術では著しい成果を上げているとされる。武器輸出という点でもアメリカを脅かす存在になりつつある。

トランプ大統領は防衛費を増やすことで、防衛輸出による米国経済再生を考えているようだ。

④貿易戦争のメインターゲットは中国攻略

いまや、中国はアメリカの最大のライバルと言っていいだろう。アメリカを代表するグーグルやアマゾンといったIT産業も、中国では百度(バイドゥ)やアリババといった企業がライバルとして成長し、EV(電気自動車)やフィンテックによる決済のキャッシュレス化も、最近では中国がアメリカに先行する姿を見せつつある。将来を見据えた経済戦略が中国では急速に進んでいると言っていいだろう。

こうした現実を踏まえて、とりあえず最大の貿易赤字の相手国である中国に対して大きなプレッシャーをかけ続けている。実際に、トランプ大統領は中国から輸入する年500億ドル分の輸入品すべてに関税を課す考え方を7月に表明しており、貿易戦争のメインターゲットが中国であることは明らかだ。

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