トランプが起こした貿易戦争の思わぬリスク 関税の応酬は世界経済を衰退させかねない

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彼が掲げる「アメリカ・ファースト」に沿う政策として、有権者に「戦っている姿」をアピールしているだけとも言える。ただ問題なのは、そうしたトランプ大統領の価値観や行動規範が、かつて自分が成功した不動産屋とテレビタレントとしての経験と才覚だけで、全世界を相手に政治、経済、防衛まで判断していることだ。

言うまでもなく、彼の大いなる誤解と過信なのだが、自分の方向性に異を唱える人間をどんどん切っていくのも、単なるパフォーマンスと考えればわかりやすい。要するに、トランプ大統領の本質は不動産屋とタレントなのだ。

トランプ大統領は何を目指しているのか?

さて、そもそもトランプ大統領の頭の中には、どんな完成形が見えているのだろうか。予測できる項目をいくつか挙げてみよう。

① 中間選挙での勝利

なぜ大統領が中間選挙にこだわるのかといえば、仮に中間選挙で米議会の上院と下院で共和党が大敗するようなことになれば、民主党が可及的速やかにアメリカ大統領の弾劾裁判へ移行しようとするからだろう。

これまでアメリカの歴史では、大統領が弾劾裁判にかけられた例は、第17代大統領のマンドリュー・ジョンソンとビル・クリントン第42代大統領しかいない。リチャード・ニクソン第37代大統領は、一時的に弾劾裁判直前にまで行ったものの、名誉を守るためみずから辞任して弾劾裁判を回避した。クリントン元大統領は弾劾裁判の動きを察知して空爆を開始することで戦争状態を作り、国内世論の高まりを回避しようとした。

トランプ大統領はニクソン元大統領のように名誉を重んじて、自分から辞任するようなことはしないだろうから、仮に弾劾裁判を立ち上げられそうになれば、クリントン元大統領が採った方法を選択するかもしれない。

いずれにしても、好き勝手なことをするためには上院、下院とも共和党に勝利してもらわなければならない。中間選挙は何があっても勝たなくてはならないのだ。

② パウエルFRB議長を脅して景気を継続?

現在のトランプ大統領が、いまだに40%近い支持率を得ている背景には、アメリカの景気が堅調であり、株価もおおむね順調に推移していることがある。日本の安倍政権も経済や株価が堅調である間は、支持者も指示してくれる。

アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)も、今年2回の利上げを実施したものの、さらにもう2回の利上げを予定しており、合計4回の利上げをしたいと表明している。

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