世界経済は米国の株価と「危険な関係」にある 米国の歴史的な貯蓄率低下が意味するもの
2月5日の米国株式市場で、NYダウ平均株価は前営業日比マイナス1175.21ドルと史上最大の下落幅を記録し、同じく暴落した前週2日と合わせて一気に年初来の上げ幅を吐き出した。筆者は昨年末の東洋経済オンラインの記事「2018年は1ドル=100~105円まで警戒」で、米イールドカーブのフラット化(長短金利差の縮小)がリスク資産価格の不安な先行きを暗示していること、それに伴いドル円相場が下値を模索するであろうことを予想し、年初の記事「株価が景気実感から離れて上昇している理由」では株式市場に過熱感があることなどを議論したが、現状はそれらの想定から大きく外れない展開になった。
もちろん、これだけ下がったのだから自律反発はあろうし、実際そうなっている。だが、金利上昇が株売りの理由に使われるようになった今、やはり局面は大きく変わったと考えるべきだ。FRB(米国連邦準備制度理事会)は、イエレン元議長が異例の1期降板に追い込まれ、パウエル議長がトランプ米大統領の厚い信任を受ける格好で誕生した経緯を踏まえると、株価にとどめを刺しかねない政策運営はやはり難しいだろう。今後の基本姿勢はハト派色を強めるはずだ。
円安ドル高見通しの決定的な欠点が浮き彫りに
昨年来、市場で流布してきた円安ドル高シナリオの多くは「(1)FRBが利上げする→(2)米金利が上昇する→(3)日米金利差が拡大する→(4)ドル円相場が上昇する」というものだ。その決定的な欠点は(2)と(3)の間に当然懸念されるべき株価下落や金利感応度の高い消費・投資の減速といった金利上昇の「負の側面」をまったく考慮していないところだ。
過去1年間、これほどイールドカーブのフラット化という形で景気減速が示唆され、「負の側面」への配慮を促すサインがあったにもかかわらず、株式市場では株価上昇、為替市場では円安ドル高を予想する声のほうが明らかに大きくなっていた。まさに「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない」を地で行く状況であった。
ゴルディロックス(適温)状態とも形容されたこれまでの金融市場のユーフォリアにおいて米国株の果たす役割は極めて大きい。その先行きは世界経済の生殺与奪の権を握るといっても過言ではない。米国の経済を語るとき、雇用や賃金、金利や株価の水準などさまざまな指標に目が向かうが、結局のところはGDP(国内総生産)の約6割を占める個人消費が堅調であるかどうかに尽きる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら