世界経済は米国の株価と「危険な関係」にある 米国の歴史的な貯蓄率低下が意味するもの

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そこで個人消費と裏表の関係にある貯蓄率(「可処分所得-消費支出」÷可処分所得)の動きを見ると、住宅バブルを背景に過剰な消費・投資行動が懸念されていた2006~2007年の平均(3%程度)をも割り込んでおり、行き過ぎ感を覚える。

現状ではISM製造業景気指数(50が好不況の分かれ目とされる)が60前後で推移するなどソフトデータの改善が天井感を帯びつつあるが、実体経済の本丸ともいえる個人消費にも同様の印象を抱かざるをえない。

貯蓄率の継続的な低下は「消費の伸び>所得の伸び」という構図が定着していることを意味するが、こうした状況はいつまでも続くはずがない。もちろん、「現在の消費」は「将来の所得見込み」にも大きく影響されるため、FRBの想定どおり、今後賃金の上昇が加速してくるならば、貯蓄率の継続的な低下はありうる。

株高による資産効果が消費の拡大を支えている

だが、周知のとおり、賃金の伸びはさほど加速しているわけではないし、それがFRBをはじめとする主要中央銀行の悩みにもなっている。1月雇用統計の平均時給の上振れは寒波の影響を受けて労働時間が減少したという技術的な要因が寄与した面も小さくなく、むしろ前月比では増加ペースが減速している。市場が不安視するような賃金や一般物価の制御不能な騰勢が迫っているようには見えないのである。

賃金の伸びが冴えないにもかかわらず、消費が加速し貯蓄率が低下している理由はどこにあるのか。これは歴史的な株高が資産効果(保有資産の含み益を背景に労働所得以上の消費・投資が誘発される効果)を通じて個人消費を押し上げていると読むのが妥当だろう。過去数年にわたるガソリン価格の下落も寄与していそうだが、近年の株価上昇なくしてここまで消費者心理が改善したとは思えない。実際、株価と貯蓄率を同じ図にプロットすれば、両者が連動しているのは明らかだ。

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