「PL脳」から抜けられない日本企業の末路 必要なのは企業価値を最大化する思考だ

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──可能性を狭めると。

経済が成熟し、同時に何よりテクノロジーの進化は加速している。しかも予測可能性は極めて低く、不確実性が高い。気づいたら、ある瞬間に自分たちの想定したマーケットが総崩れしてしまうことも起こりうる。こういう時代に、去年より今年、今年より来年という積み上げ型で本当に価値のある事業を作り出せるか。それは難しい。自分たちの確かな意思と行動で将来の事業を描いたうえで、「逆算型」で投資していく発想に切り替えないとジリ貧になってしまう。

伝統的な起業ほどPL脳に陥りがち

──日本企業はまだ多くが旧態依然なのですか。

伝統的な企業ほどPL脳ばかりに陥りがちな現状にある。かつての成功体験にとらわれているからだ。今、経営の中枢を担っている人たちは若かりしころ、PL脳的なやり方でうまくいっていた経験がある。それを引きずってしまっている面もある。

──ファイナンス思考もっぱらに切り替えるべし、と。

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いくつかの事例を提示した。中でも、アマゾン、日立製作所やリクルートホールディングスはどうか。アマゾンを代表とする米国のGAFA(ITメガ4社)、「日立時間」と言われたほど伝統的な会社だった日立製作所、「江副イズム」が強烈に根付くリクルートは、いずれもファイナンス思考を大いに生かし、転機や契機を見事にとらえている。

──ここ数年、日本でもスタートアップ企業が脚光を浴びています。

現状はバブル入りだと思うが、私が手掛けていたリーマンショック後の冬の時代とは様変わりした。

スタートアップはファイナンス思考がないとできない。プロダクトがない状態で先行投資を始める。事業創出へ初心の思いでステークホルダーを口説く。それにチャレンジする若い人が増えているのは、ファイナンス思考が経済活動のルールそのものと気づいているからだろう。オープンイノベーションをはじめ同じ問題意識を持った大企業が目立ちだしたのも心強い。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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