中国中心の世界を描く習近平の赤裸々な野心 世界はどう対峙するべきなのか

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どうやら、中国外務省は習氏から標的にされてしまったようだ。習氏は氷河のようにゆっくりとしか動かない外務省にいら立っており、そのいら立ちが前述のような教条主義的な大方針となって現れたフシがある。

つまり、中国の外交官は「諸君らは中国共産党の歯車だ。そこを勘違いするんじゃない」と一喝されたに等しい。習氏は自らの世界ビジョンを具現化しようと、これまで以上に激しく外交政策にムチを入れてくるに違いない。

シートベルトを締め、荒波に備えよ

6月の会議で習氏は、「公正と正義の概念に基づき、(今こそ中国が)世界統治システムの改革を主導しなければならない」と訴えた。刮目すべき発言だ。自国中心の世界秩序を打ち立てるという野心を、中国がこれほどあからさまに宣言したことはかつてなかった。世界はしっかりとシートベルトを締め、荒波に備えるべきである。

既存の多国間枠組みが機能不全に陥る中、中国はこうした状況に抜け目なく目を光らせている。習氏が「世界統治システムの改革」を主導したくなっても不思議ではない。中国は自国の「中心的利害」に沿うように、多国間枠組みを変えようとしている。米国や西側諸国の影響力を徹底的に引き下げようとしているのである。

では、中国と対峙する国際社会の側に明確な戦略はあるのだろうか。そもそも、どのような国際秩序を理想とするのか。米国に方針はあるのか。国連憲章やブレトン・ウッズ体制、世界人権宣言などに刻み込まれた国際的な価値を守っていくために、われわれはどう協力していくつもりなのか──。

世界秩序は今まさに変動期にあり、中国は明確なビジョンを描けている。問題は挑戦を受ける側の国際社会にそれがないことだ。

ケビン・ラッド オーストラリア元首相

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Kevin Rudd

オーストラリア国立大学で中国語と中国史を専攻。外交官を経て、政界に進出。外相、首相を務めた。米アジア・ソサエティ政策研究所所長。

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