エアトリ、DeNAトラベル「格安買収」の真意 エボラブルアジアはOTA再編の目玉になるか
OTA自身の株価も高い。エボラブルアジアの時価総額は475億円、予想PERは53倍。エボラブルアジアのライバルで、予約サイト「スカイチケット」を運営するアドベンチャーは各627億円、189倍。比較サイトの「トラベルコ」のオープンドアは各727億円、80倍もある。その中で「DeNAトラベルの12億円はまさに破格と言ってもいい額」(旅行業界関係者)。
とはいえ、DeNA側にも売らざるを得ない理由があったようだ。DeNAは事業領域の見直しを進めている。2016年10月にはDeNAショッピングをKDDIに63億円で譲渡すると発表。DeNAトラベルの売却はこれに続くものと会社側は説明している。
DeNAトラベルの業績は売上高が56億円、営業損益が19億円の損失だった(2018年3月期)。DeNAによると、過年度の原価計上漏れの修正やソフトウエアの減損を計上した結果、赤字に陥ったという。
アドベンチャーは同業の株式を取得
DeNAトラベルの源流は、1979年に旅行業の営業を始めたエアーリンクという会社にある。DeNAは2006年、店舗を構える従来型の旅行会社だったエアーリンクを買収。その後、2007年にソネット傘下でOTAのスカイゲート、ガイドブック『地球の歩き方』の海外航空券販売事業を買収し、のちにエアーリンクに合併させた。2015年には社名をDeNAトラベルに変更して、現在に至っている。
「細かいことは言えないが、両者協議の結果。第3者の評価も参考にしながら決めた適正な価格」(DeNA側)。エボラブルアジアも、「DeNAは(売却の)価格よりも従業員や今後の成長を考えて、シナジーがあると考えてくれた」(吉村英毅社長)。
エボラブルアジアは6月1日、DeNAトラベルをエアトリブランドに変更。海外に強いDeNAトラベルと国内に強いエアトリの一体化を目指す。また、これまで赤字を垂れ流していた海外発着事業や業務フローの見直し、エボラブルアジアのシステム化ノウハウを注入。外資系のOTAに対抗できるようにマーケティングや開発も一本化し、強化する方針だ。
エボラブルアジアの買収劇の脇では、ライバルのアドベンチャーが2月末から断続的にOTAである旅工房の株を購入していることがわかっている。直近の大量保有報告書によれば、2.4億円を投じて6.65%を取得し、オーナーである高山泰仁社長(54.5%)に次ぐ、第2位株主に浮上した。アドベンチャー側は「投資目的」で取得したと説明するが、業界再編の機運が高まっているとは言えそうだ。
「まずはエアトリを誰もが知っているブランドにしたい」(吉村社長)。とはいえ、圧倒的な資金力を持つ外資系OTA、LINEやDMM.comといった新規参入組との競争が激化する中で、どこまで成長スピードを上げることができるのか。
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