熱海が「イケてない街」から脱せた本当の意味 これは日本のどの地方にも応用できる事例だ

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前述した華やかな実績が生み出される以前には、まずこうした問題をクリアする必要があったということである。具体的にいえば、シャッター街と化した街の中心を「リノベーションまちづくり」という手法を用いて活性化させたのだが、それは不況にあえぐすべての地方都市にも応用できるということだ。

もちろんそのためには市来氏のように、そうしたハードルを乗り越えることを厭わない姿勢が不可欠だということなのだろうが。

「リノベーションまちづくり」とは?

そしてもうひとつ重要なのが「リノベーションまちづくり」、すなわち「リノベーションで街をつくる」という視点だ。

古い街をただ壊すのではなく、古い街にそのまましがみつくのでもなく、街の良さを新しい価値観で発見して活かしていく。
それがリノベーションまちづくりです。
日本の地方都市にはそれぞれ、独自の歴史があり、自然があり、文化があります。その個性を新しい目で見直すことで、街を再生するカギを発見することは不可能ではないはずです。
街という地方社会を活性化するために、リノベーションにより街の良さを活かしたビジネスを起こすというまちづくりは、日本中のあらゆる地方都市でもできると思うのです。(218~219ページより)

安易な解決策やノウハウではなく、自身の経験を余すところなく書いたという市来氏は、ここからなにかを知り、感じ取ってもらえたらと思っているそうだ。それは、読んでみて私自身が感じたことでもある。

だからこそ、地方再生について悩む人にはぜひ読んでほしいと感じる。

いや、2020年以降に日本が衰退していくであろうと予測されている以上、地方の人のみならず、すべての日本人が読むべきだと言っても過言ではない。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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