熱海が「イケてない街」から脱せた本当の意味 これは日本のどの地方にも応用できる事例だ

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ちなみに話は前後するが、2013年からは静岡県、熱海市などと協働でリノベーションスクール「@熱海」も開催。加えて2016年からは熱海市と協働で「ATAMI2030会議」、創業支援プログラム「99℃」なども企画運営しているというので、「熱海をなんとかしたい」という思いを見事に実現したことになる。

つまり本書には、そのプロセスが詳細に綴られているわけだが、ひとつ重要なポイントがある。ここに書かれていることは「熱海がたまたま実現できたこと」の羅列ではないということだ。市来氏自身も、そのことをはっきりと認めている。

この本では、熱海で私たちが培った経験を、可能な限りお話しました。
ビジネスの手法でまちづくりをすることは、熱海だけに使えるやり方というのではなく、日本全国どこの地域でも使えると思うのです。
なぜなら、かつての熱海の衰退は、日本全国の地方の衰退と同じ構造で起こったからです。(19ページより)

熱海の衰退は、全国の温泉観光地の衰退と共通した原因を持っていたと市来氏は指摘する。熱海においては、高度経済成長期に盛んだった団体旅行や企業の慰安旅行が、全国に先駆けて激減した。そして個人や家族単位での旅行が主流になったことで、お客さんのニーズに応えられなくなった。そこが衰退の原因であるわけだが、それは熱海に限ったことではなく、すべての温泉観光地に共通して当てはまることだというのである。

地元の人たちのネガティブな姿勢

ちなみにシャッター街に象徴される地方の衰退は、人口減少が原因だと考えられがちだったが、最近、地方活性化に取り組んでいる人々の間では「人口減少よりも街の魅力の乏しさこそ問題」だと捉えられるようになっているそうだ。

事実、市来氏も活動の指揮段階において、地元の人たちのネガティブな姿勢に直面している。

「熱海には何もない」
私が帰ってきてまずショックだったのは、この言葉でした。これは誰か一人が言ったわけではなく、同様の言葉を地元の多くの人たちが口にしていたのです。
例えば、あるとき、熱海に観光で遊びに来たある女性が、観光協会にクレームを伝えて帰ったという話を耳にしたことがあります。
「何もないって、一日に三回も言われた」
その女性は熱海に来て、まずお土産物屋さんで聞いたそうです。
「どこかいいところはありませんか?」
 すると、お土産物屋さんからこう言われました。
「何もないよ」
 次に、タクシーでも同じことを聞いたら、
「さあ、何もないねえ」
 ガッカリして、旅館に戻って聞いても、
「何もないんですよねえ」(中略)
これでは、熱海が衰退するのは当然だと思いました。
地元の人たちのネガティブな熱海のイメージが変わらないと、熱海の再生なんかあり得ない。最初の課題はこれだと、私は気づいたのでした。(58~60ページより)
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