米国企業と比較して日本の企業は、株主利益の実現に対して不熱心だとの批判がある。利益の中から配当や自社株買いなど株主に渡すキャッシュの比率が低いし、ROE(自己資本利益率)も低い。実質的に身内ばかりの取締役会で経営のチェックが甘いなどコーポレート・ガバナンス(企業統治)が劣っているとも言われる。
「コーポレート・ガバナンスが優れた米国企業の株には投資してもいいが、日本企業の姿勢を見るととても投資する気が起きない」などという投資家もいる。
コーポレート・ガバナンスについては、たとえば社外取締役が本当に企業価値の役に立っているのかなど別途議論したいテーマはあるが、「株主還元が弱い」、「コーポレート・ガバナンスが株主指向ではない」といった内容はおおむねそのとおりだろう。
投資家にチャンスが大きいのは「ガバナンスダメ会社」
さて、それでは、ガバナンスが優れている企業に投資するほうがいいのか? 株価形成の原理を考えると答えは「ノー」だ。
仮にガバナンスの良しあしが株価に影響するのだとすると、良いガバナンスの会社にはすでに高い株価が付き、悪いガバナンスの会社には低い株価が付いていると考えられる。期待されるリターンはおおむね同じのはずだ(理論的には両株式のリスクの違いによって少し差が出る)。
「合理的へそ曲がり」は、もう一歩踏み込んで考える。ガバナンスのいい会社は、ガバナンスを改善する過程で、改善に伴うリターンをすでに実現しているにちがいない。これに対して、ガバナンスがダメな会社は、これからガバナンスを改善することによるリターン向上の可能性を残している。先の変化はわからないが、ガバナンス面で投資家にとってプラスのチャンスが多いのは、むしろ「ガバナンスダメ会社」のほうではないか。
簡単な例を考えてみよう。事業はそこそこだが、誰が見ても「社長がものすごくダメな会社」があるとしよう。この会社の場合、社長が「普通の社長」に交代するだけで、株価的にはプラス材料だろう。普通の社長に代わるだけでいいのだ。
結果に責任は持たないが、ダメな経営者の会社の株式だけに投資するファンドを作ると面白いかもしれない。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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