7月6日、アメリカによる追加関税の一部が実行されました(340億ドル相当)。すぐに中国も報復関税発動となりました。このあとはどうなるのでしょうか。今回はもう少し先の「大きなシナリオ」を見ておきましょう。
「報復関税合戦」が自動車に飛び火したら大変なことに
この件については繰り返してきましたように、金額的にも小さく、アメリカのドナルド・トランプ大統領にしてみれば彼にゆかりのあるプロレス団体であるWWEの流儀で「まずは殴り合う」、という選択をするだろうということで予想の範疇ですが、問題はこれが自動車に飛び火するか否か、という点です。5日は駐ドイツのアメリカ大使がEUに自動車関税回避の提案をしたという報道を受け、アメリカの自動車関連株が上昇しました。
自動車は、世界的に規模が大きく、少なくともアメリカだけで2017年に3590億ドルの自動車を輸入しており、仮に今検討している25%(トランプは実は20%だ、とツイートしている)の関税をかけるとすると、約900億ドル、つまりざっと10兆円の関税という話になり、これまでの話とは下手をすると、ケタの違う次元になってしまいます。
こうなると、報復関税という問題以前に、最終的にこの10兆円を負担するのは消費者であるアメリカ国民であるということを忘れてはいけません。最終的に「自動車」と言い出すことになれば、アメリカが関税で儲かるわけではなく、値上げを通じてその分がアメリカ国民に負担が転嫁される、というメカニズムを、どうもトランプ大統領は理解していないとしか思えませんね。
これにより、純粋に国民の負担が増えるわけですから(だからと言って急に車に乗るのをやめられる状況にはない)、順風満帆だった個人消費(GDPの70%を占めるので、ほぼアメリカ経済そのものだと言っていい)にブレーキがかかることで、経済成長が減速する可能性は否めません。FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが加速しそうだという見通しとあわせ、自動車に関する関税の動きは注意が必要です。
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