入試を歪めた文科省と私大の「不幸な関係」

補助金で迫る文科省、改革に及び腰の私立大

大学側が多様な解答を受け入れる用意があるのに、文科省の通知に従い、「標準的な解答例」を公表しようとするとどうなるか。公表する大学側は、多様な解答を可とした入試問題で、それらを体系だって公表しようがないから、外部から批判されないような無難な例を「標準的な解答例」として公表せざるを得ないだろう。

そして、それを見た受験生も、唯一の正解があるわけではないのに、リスクを冒して人と違った解答をするより、「標準的な解答例」を意識して無難な解答を書こうとするだろう。せっかく、大学側が多様な学生に入学してもらいたいと望んでいるのに、標準的な解答例を公表することで、受験生の解答は画一化する可能性があり、それは大学が本来求めている学生像とは異なる結果になる。

このように、たかが解答例公開かもしれないが、文科省は、これまた大学入試を歪めるような通知を出したといえよう。そもそも、出題ミスの再発防止をどうするかが課題なのだから、画一的な解答公表でない方法が考えられるはずだ。たとえば、大学側が、入試問題の事前点検を強化するなどが挙げられる。そうした再発防止策は、文科省から求められる前に、大学側が自ら率先して実行すべきことである。

文科省と大学の関係が今のような関係になったのには、大学側の怠慢によるところも大きい。定員割れしている私立大学は約4割にも達していて、受験生に魅力を感じてもらえるような努力が足りていない。国からの補助金が大きく減れば、経営が立ち行かなくなる大学も多い。民間企業の常識に照らして、大学のガバナンスに疑問が呈されることもままある。

文科省は事後チェック型へ、私大は国依存から脱却を

大学が学生や社会からみて魅力ある存在になるようにするには、どうすればよいか。大学行政を司る文科省は、近年つとに頭を悩ましている。大学改革が進まないなら予算を減らせ、という声もある中、文科省は、大学に配る補助金を、今まで通りに漫然と出すわけにはいかない。

筆者は文部官僚ではないから、大学側からの邪推にはなるが、文科省から大学に改革を進めるよう求めても、「大学の自治」や「学問の自由」を盾に、大学側が文科省の言い分を鵜呑みにしたくない、という態度も散見される。予算獲得のためには大学改革が必要で、改革を推進することを約束しつつ大学に恩恵が及ぶ予算を確保したのに、大学側が改革に不熱心で、なかなか文科省の言うことを聞かない。

そうした大学の怠慢が、文科省が大学に対して、より高圧的に臨まざるを得ない状況に追い込んだのではないか。補助金分配が受託収賄容疑の便宜に当たるというのは、その最たるものだろう(もちろん、そうした行為は断じて許されるものではない)。

こうした文科省と大学の「不幸な関係」を終わらせるには、大学側が、文科省への依存を減らし、学生や社会から見て魅力ある存在になるべく、不断の改革に取り組むことは言うまでもない。国からの補助金よりも卒業生や企業からの寄付金をもっと獲得するような努力も必要だ。

加えて、文科省が大学行政において、事前裁量型行政から事後チェック型行政へともっとシフトさせるべきだ。(事後的な成果を不問にして)事前に補助金分配で裁量を働かせるのではなく、予算執行の結果として、事後的な成果で信賞必罰的に対応する。護送船団式の事前裁量型の大学行政は、これを機に終わらせるべきである。

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