意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か 池上彰が教える、"大人のための"教養教室
それは「物々交換」から始まった
大昔の日本では、人々は狩猟をしたり、木の実を集めたり、魚介類を獲ったりして生活していました。そして、やがて稲作が大陸から伝わったことで、米作りも始まりました。
たとえば、あなたが海辺に住んでいて、魚や貝を獲って生活していると考えてみてください。獲った魚を家族で食べているうちに、たまには獣や鳥の肉を食べたくなったり、野菜や果物もほしくなったりするはずです。また、衣(い)、つまり着るものもほしくなるでしょうが、それには動物の毛皮のような材料も必要になります。
しかし、魚以外のものを手に入れるには、あなたのところに余分に確保されている魚や貝を、ほかの人が持っている肉や毛皮と交換する必要が出てきます。これが「物々交換」です。
物々交換が成立するためには、あなたがほしい肉を持っている人が「魚をほしがっている」という「偶然」も必要です。つまり、「大昔は物々交換をしていた」といっても、実はそう単純にはいかなかったのです。とりわけ、魚や肉はすぐに腐ってしまうので、早く交換しなければ価値がなくなってしまいます。
そこで、魚や肉を、とりあえず稲と交換しておこうという動きが出てきます。稲は長持ちしますし、食物として誰しもがほしがるものです。とりあえず稲に換えておけば、やがてほしいものが出てきたときに簡単に交換できるだろう、と考えたわけです。
こうして、日本では「稲」が物々交換の「仲立ち」を果たすようになりました。
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