意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か 池上彰が教える、"大人のための"教養教室

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当初のおカネには、「このお札を持って来れば、いつでも同じ価値の金(きん)と交換します」と書いてありました。「いつでも交換できる紙幣」という意味で、これを「兌換(だかん)紙幣」と呼びます。そして、このしくみを「金本位(きんほんい)制」といいます。

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日本初の兌換紙幣が登場したのは1885年のこと。以後日本国民は「これで、いつでも必要なときに金(きん)に換えられる」と信じ、紙幣を使うようになっていったのです(ただし、日本の兌換紙幣第1号は、銀貨と引き換える「兌換銀券」だった)。

こうして、銀行が持っている金(きん)の量をもとに紙幣が発行されました。ところが、やがてこれにも不都合が生じてきます。経済が発展するとともに、紙幣が大量に必要になってきますが、日本銀行(日銀)が持っている金の量にはさすがに限りがあります。そのため、世の中に必要なだけの紙幣を発行できなくなるのです。

兌換紙幣から不換紙幣へ

そこで日銀は、1942年から、日銀が持っている金(きん)の量に関係なく紙幣を発行するようになりました。紙幣を日銀に持ってきても、もう金とは交換しなくなったのです。つまり、兌換紙幣が「不換(ふかん)紙幣」になったわけです。

でも人々は、それ以後も変わりなく紙幣を使っています。これを「おカネ」だと信じ、国家を信用しているからです。

お札がいったん不換紙幣になると、日銀は、持っている金(きん)の量に関係なく、発行するお札の量を自由にコントロールできるようになります。これを「管理通貨制度」と呼びます。おカネの量を自由にコントロールできるといっても、紙幣を勝手に大量に印刷すれば、インフレ(物価が上がっていく状況)になってしまいます。かといって、紙幣が少なければ、今度は逆にデフレ(物価が下がっていく状況)に。おカネの量のコントロールは、とても難しいのです。

【「おカネ」のまとめ】
誰もが「おカネ」と信じているからこそ、そもそも「おカネ」は「おカネ」として通用します。でもこれ、よく考えると不思議なものです。
<覚えておきたいポイント>
●おカネの原点は物々交換
●「仲立ち」としておカネが誕生
●国家への信用がおカネの価値の裏づけとなる

以上、この記事では、“知っているようで知らない”「おカネの成り立ち」について簡単に解説しましたが、「おカネ」というものが私たちの生活、そして人生に深くかかわっている以上、その“おおよそ”をざっくりとでも知っておかなければなりません。

大人として、そして社会人としてはずかしくない最低限の「教養」。誰かに聞かれたとき、あなたはちゃんと説明できるでしょうか。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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