意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か 池上彰が教える、"大人のための"教養教室

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(イラスト:ケン・サイトー)

日本から遠く、ヨーロッパや北アフリカの地では、米ではなく「塩」がその役割を果たしていました。「給料」のことを英語で「salary(サラリー)」といいますが、これはラテン語で塩を意味する「サラリウム」から来ています。なかでもローマ人は、働く人々に塩を賃金として支払っていたのです。

なお、稲がいくら長持ちするといっても限界はあります。1年も経たつと味が落ちてしまいますし、湿気でカビがはえることもあります。こうして、稲や塩に代わって、物々交換の仲立ちをする「新たなもの」が求められるようになります。その結果、金(きん)や銀といった貴金属が使われるようになったのです。

これが「おカネ」の発生です。

おカネに「金(きん)」が選ばれた理由

貴金属は小さくて腐りません。持ち運びが簡単ですし、保存しておいても品質は変わりません。つまり価値が安定していますから、誰が売買の支払いとして使っても、安心して受け取ることができます。こうして、物々交換の社会は「貨幣経済」の社会へと発展することになりました。

この貴金属には、主に「金(きん)」や「銀」が使われました。そもそも金は光り輝いていて美しいので、価値あるものとして古くから人気がありましたし、大量に採れないので、とても貴重で価値も安定していました。そのうえ、青銅などに比べて軽く、持ち運びも便利でした。また、熱を加えればすぐに溶け、加工もしやすかったのです。

しかし、金(きん)や銀も長いあいだ使っていると、不便なことが起きてきます。物々交換で使われる食物などと違って腐ることがなく、まさに価値が“貯蔵”できるのですが、大量になると、とにかく重くて持ち運びが困難になってしまいます。

そこで、「これを持っていれば金と引き換えます」という約束を書いた紙(約束手形)を取引に代用するようになりました。これが「紙幣」の始まりで、約束手形を発行していた業者の中には、後に銀行へと発展していく者もいました。

(イラスト:ケン・サイトー)
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