サザンが「40周年」まで成功し続けたワケ なぜ本格的な低迷に陥ることもなかったのか

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思い出すのは、40年前=1978年8月31日のTBS『ザ・ベストテン』における伝説のシーンである。人気上昇中の音楽家を取り上げる「スポットライト」のコーナーに、デビュー間もないサザンオールスターズが、ライブハウス・新宿ロフトからの生出演。

そこで、「急上昇で有名におなりですが、あなたたちはアーティストになりたいのですか」と聞く黒柳徹子に対して、若き桑田佳祐が答えた言葉――「いえ、目立ちたがり屋の芸人でーす!」

その日から何と40年も間、先のマップで言えば上方向に位置する、コミカルでやんちゃなイメージを徹底し続けることで、「しかめっ面」した他の音楽家との徹底的な差別化を図り、「成熟」や「完成」を嫌うファン層の人気を確保し続けてきたのだ。

ファン層の中心は40~60代となる。高齢化社会の進展の中で同層は、年を取っても、この国の人口の中での「相対的な年齢」(=「年齢偏差値」)はそれほど高くなっていない。その結果、しばらく前の同年代とは比べ物にならないくらい、驚くほど意識が若い。

そんな彼(女)ら(私含む)が、「成熟」や「完成」を嫌うことは自然な流れである。そして「目立ちたがり屋の芸人」感覚を忘れない62歳=桑田佳祐にシンパシーを感じることも――。

桑田佳祐とビートたけしの共通点

最後に。日本のエンタメ界で、先のマップのように幅広い守備範囲を押さえている存在として、他に誰がいるかと考えてみて、1人だけ思い浮かんだ――ビートたけしだ。

「お笑い」「映画監督」「司会者」「小説家」と、何をやっても超一流の「総合商社」。幅広く圧倒的な才能として君臨し続けながら、「成熟」や「完成」を嫌い続け、かぶり物をしてテレビでおどけるさまは、桑田佳祐と酷似している。

では、彼らはなぜ「成熟」や「完成」を拒否し続けるのか。その背景にあるのは、現状の成功に安住せず、さらなる高みを希求する意志であり、さらには、本質的な意味で自由な精神性のたまものではないか。私には彼らの活躍が、戦後民主主義の最大の成果の一つとさえ思える。

桑田佳祐の手によるメッセージソングの歌詞を読み取れば、桑田佳祐のそういう自由な精神性が、手に取るようによくわかる。

「目立ちたがり屋の芸人」の奥に潜む、権威や束縛や固定観念を憎む、徹底して自由な精神性――そこに目を向ければ、サザンオールスターズの音楽がさらに楽しくなるはずだ。

(文中敬称略)

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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