財産分与7000万「バツ2会社員」の3度目の正直 「懲りない男」は過去の失敗を活かせるか

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知里さんも陽一さんのダンディな外見とエネルギッシュな働きぶり、料理上手(片付け以外)なところに惚れ込んだ。しかし、初婚の知里さんにとって「バツ2」は未知の領域である。

「伝えるタイミングについては、やはり結婚相談所の担当者に相談しました。初回では引いてしまうだろうし、遅すぎると不誠実になります。相談の結果、3回目のデートで話しました。彼女はショックで泣いていましたが、翌日に『それでもお付き合いを続けたい』と言ってくれました」

いま、陽一さんは見た目が好みすぎない知里さんとの関係に「ちょうど良さ」を感じている。全力で働けるのはあと10年ぐらいだろう。その後は、資格を生かして働ける知里さんにも頑張ってもらって、穏やかに暮らしていきたい。

2人の懸案

懸案は二つある。陽一さんには東京郊外に自慢の邸宅があり、今さら手放したくはない。しかし、そこからでは都心の会社にシフト制で勤務する知里さんは通勤が大変すぎる。

「彼女は会社近くの1Kのマンションに住んでいるので、平日はそこで寝泊まりしています。週末にうちに来て、1、2泊していくのが現状です。いわゆる週末婚ですね。一緒にごはんを作っておいしい酒を飲んでいます。幸せですよ」

寂しがりの陽一さんとしては、できれば毎日一緒に暮らしたい。知里さんは今年中には現在の勤め先を辞め、陽一さんの邸宅から通える範囲の場所で転職先を探す予定だ。

もう一つの懸案である「子ども」については、陽一さんのほうが譲っている。すでに3人の子どもを作った末に「自分はそれほど子ども好きじゃない」と自覚している陽一さんだが、知里さんの強い希望によって子作りを始めている。

「ただし、僕の年齢では1人が限界なので、『2人目は無理だよ』と伝えてあります。養育費の支払いはあと4年で終わるのですが、今から子どもを成人するまで養おうとすると70歳までは働かなければなりません。経済的な問題だけでなく、元気に働くお父さんの姿を見せたいのです」

陽一さんと知里さんには、3つ目の懸案があると筆者は思う。陽一さんが70歳まで元気で働けたとしても、その後も長い「老後」が続く可能性が高いことだ。現在は、年上で稼ぎもいい陽一さんが完全に上位にいるが、20年後には知里さんとの立場が逆転している気がする。そのときに陽一さんはかわいげを発揮して、知里さんのリーダーシップに楽しく従えていることを祈りたい。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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